ダークエルフ姉妹と召喚人間

山鳥心士

ダークエルフ



 夜が更け、朝を迎えたイラエフの森。


 森の中央に位置するヴィアーヌ湖から少し南にある、ダークエルフの姉妹の住む家では煙を上らせていた。


 箱型に焼き上げたマイの実パンをスライスし、断面をカリカリになるまで焼き上げる。焼き上げたパンにはマーガの実で作ったバターを塗り、オグリの実のジャムをのせる。


 小さなキッチンに所狭しと並べられた器には、庭で育てている香草のスープが入れられていた。


 最後に、大皿の中に次々と葉物野菜を盛り付けて、酸味を聞かせたオグリの実ドレッシングで味をつける。
 

 イルザ達の定番ともいえる、朝食が完成した。


 「今日も見事にやさ・・・いや、旨そうな朝飯だ!」
 

 動物から採れるたんぱく源を苦手とするエルフという種族。魔族であるダークエルフも例外ではなかった。


 魔界に来てから肉を食べる機会を失った人間のグレンは、思わず野菜まみれのメニューに愚痴をこぼしそうになったが、聞こえるか聞こえないギリギリのところで言い直せた。


 「お肉が食べたいなら・・・」


 「あー! 言ってない言ってない! イルザの飯は最高だな~!」


 と思っていたが、ばっちりとイルザの耳には届いていた。


 「エルフとダークエルフってなにが違うです?」


 青髪の少女は虚ろな瞳でイルザに疑問を投げた。


 エプロンの紐を解いて戸棚にしまい、テーブルに着いて全員で食事を始める。


 しばらく黙っていたイルザだったが、ようやく口を開いた。


 「エルフとダークエルフの違いはね、人間か魔族どちらに近いかっていうことよ」


 黙々と食事を続ける一同に、少しだけ重い空気がのしかかった。


 「といっても、起源ルーツを知ったのは父が残した書物で、だけどね」


 ははは、と困ったような表情を見せるイルザ。


 「エルフはグレンと同じ人間族です?」


 「そうよ、エルフは人間界で暮らしていたらしいわ。そして、あるエルフ一族の一人が魔族と交わ
ってしまって、誕生したのがダークエルフってわけ」


 「ってことはダークエルフって人間と魔族のハーフってことなのか?」


 純粋な魔族だと勘違いしていたグレンは、思わず食事の手を止める。


 「んー・・・。起源ルーツはそうらしいけど、私たちがそうなのかはわからないわ。私たちの他にもダークエルフはいると思うし、純粋な魔族と言っていいのかも」


 ようやく食事を始めたイルザ。


 「・・・だけど、家族以外のダークエルフは見たことない」


 沈黙を続けていたエルザがようやくそれを破った。ずっと黙っていた理由は言うまでもない。


 一人素早く食事を終わらせた姿に再び驚いた表情を見せるスミレ。


 首をかしげてスミレを見つめ返すエルザをみてグレンはため息を吐いた。


 「食欲旺盛なのはいいことだけどよ、もう少しゆっくり食えねぇのか?」


 「・・・私は普通に食べてるだけ」


 「それで普通って・・・本気を出したらどうなるんだ」


 「・・・見てみたい?」


 「いや、恐ろしいからやめておこう」


 悪戯っぽく微笑むエルザと、手で頭を抱えるグレンのやり取りは本当の兄妹のようで微笑ましかった。


 食卓に流れていたほんの少しだけ重い空気は、軽くなった。


 イルザが何故、話すことを少しためらったのか、それはダークエルフが誕生した後にあった。


 魔族と交わってしまった人間族は、とがとして神に親子諸共魔界へと追放されたのである。


 弱肉強食で秩序の無い魔界で人間族が生き残るのは簡単ではなかったが、子供を守るために生残った。


 しかし、神は子であるダークエルフを人間族と認めず、魔族として生きることを強いた。


 種を増やしたダークエルフの一族は、魔界へ追放した神への報復として神界へ攻撃し、神を殺した。


 おとぎ話である書物だったが、そういう話の類の半分は真実で構成されている。恐らく、人間族として認めず、魔族として生きることを強いた部分までは、本当のことだろうと推測していたイルザ。


 一族の起源ルーツが悲しいものだと感じていたイルザはこの話は好まなかったのである。


 「みんな食べ終わったわね?」


 気持ちを入れ替えて全員に話しかける。




 「準備が整い次第、救出に向かうわよ!」


 「ああ!」


 「・・・ええ」


 「はいです」


 イルザ達はスミレの仲間を奴隷商人から救うため、各々準備をするべく、部屋に戻る。



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