押し入れの中から・・・。

月夜野 星夜

押し入れの中から・・・。

 あれは、僕が小学校に上がる前の事だった。家族皆で田舎にある母の実家に遊びに行った。


 三泊四日の予定で、子供だった僕は大きくて広い昔ながらのおばあちゃんの家に興奮していた。


 1日目と2日目は、大自然の中を走り回るのに夢中だった。川で泳ぎ、魚を捕まえようとしてみたり、山を駆け回っては、珍しい昆虫を採ったりしていた。


 しかし、3日目は朝から雨で外で遊べなかった。そこで家の中を探検する事に決めた。


 おばあちゃんの家はかなり広かった為、十分に探検しがいがあった。


 あちこちの戸を開けたり、狭い場所をくぐったりしているうちに、見慣れない座敷へと辿り着いた。


 (こんな所あったっけ・・・?)少し疑問には思ったが、自分の見ていない場所が少々あったとしても不思議では無い位の大きな家だったし、子供だったのでそんなに深くは考え無かった。


 その座敷には、特に子供が興味を惹かれる様な面白いものは何も無く、がっかりした僕は今来た方へと戻ろうとした。


 その時だった。


 「・・・お~い、・・・・・・お~い」


 僕の後ろの方から、かすかな声で何者かが呼ぶ声がした。


 ビクッとなって、思わず振り返ると座敷の奥の方に押し入れがあるのに気づいた。


 「・・・お~い、・・・・・・お~い」


 声は、その押し入れの中から聞こえてくる・・・。


 僕は、怖くなって逃げ出そうとしたのだが、その声はどうやら僕に助けを求めているらしかった。


 「お~い・・・、ここから出してくれ、俺ではこの戸を開けられないんだ・・・」


 「!?・・・おじさん・・・?閉じ込められちゃったの!?」僕が驚いて聞き返すと、「おお、そうだ。頼む坊主、開けてくれ」と、その声は確かに男の声で返事をした。


 (大変だ!)僕は慌てて、戸を開けた。


 押し入れの中は、上下二段に分かれたよくあるタイプのものだった。


 「・・・・・・?」しかし、上の段も下の段もガラクタが雑多に置かれているだけで誰の姿も見えなかった。


 おかしいなと思っていると、下の段の方から声がした。


 「開けてくれて助かったぜ。何しろ俺には手も足も無いからな」


 足下へと目を向けると、そこにはやや大きめのダルマが鎮座していた・・・。


 「!?!?!?」


 その後の事は、よく覚えていない・・・。僕は無我夢中で逃げ出し、気づいた時には母の胸の中で泣きじゃくっていた。


 あの後、おばあちゃんにあの座敷の事をそれとなく聞いてみたのだけれど、「そんな座敷には覚えが無い」と言われてしまった。


 僕自身、あの座敷に行く事は二度と無かった。


 一体あの出来事は何だったのだろう・・・。すべては謎のままである。









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