話題のラノベや投稿小説を無料で読むならノベルバ

幻想自衛隊 ~我々は何を守るべきか~

メガネ2033

第24話 暴徒対自衛隊

2023年8月30日am8:30 人里(木島三尉視点)


特殊部隊を乗せたヘリが高度を下げたとき我に返った暴徒達の銃が一斉に火を吹いた。

部隊を降下させるために減速しつつ、高度を下げていたヘリにこの射撃を回避する事は難しかったようだ。瞬く間に多数の弾丸が機体に吸い込まれていき金属音を響かせる。


火縄銃から放たれる球体型の鉛玉は、現代火器で使用される円錐形の弾薬に比べて極めて貫通力が劣る。

いかに火薬の力によって打ち出された弾丸に違いないとはいえ、ヘリを構成する鉄板を貫徹するようなことはできなかったようだ。

しかし、それでもティルトローターにでも当たるようなことでもあれば最悪、制御不能に陥り墜落する可能性もある。


「三尉、このままじゃヘリが…」


言われなくても分かっている

佐藤の進言を最後まで聞かずに俺は伊藤一佐に駆け寄った。


「発砲許可を下さい。早くしないとヘリが墜ちます」


「待て、ヘリの高度が低い。今撃てばヘリの風に流された流れ弾が民間人に当たる可能性が高い」


「んなもん墜落の被害に比べたらコラテラルダメージでしょうが!」


「あぁっ!墜ちるぞぉ!」


その時、俺の背後から山本の悲鳴に近い声が聞こえた。

すぐに後ろを振り返ると、そこには急旋回しながら急降下するヘリの姿があった。


「総員退避、建物の影に隠れろ!」


伊藤一佐の命令を受け隊員達が慌てて遮蔽物の陰へと退避を試みる。しかし、俺とヘリの距離では到底間に合いそうもなかった。


俺は次に訪れる未来を予想しながら咄嗟に地面に伏せ来るべき衝撃に備えた。


だが、その心配は杞憂に終わった

いつまでたっても自分を襲うはずの爆風による衝撃や痛みはやって来なかったのだ

状況を確認しようと前を向いたときそこには驚くべき光景が広がっていた


「何でこんな近くにヘリが…」


目の前には暴徒たちの頭上すれすれでホバリングするSH-60/kの姿があったのだ


「クソ、風が強くて前が見えない」 


暴徒たちの悪態を聞いて初めて木原というパイロットの凄さが分かった


「ダウンウォッシュ作戦か…」


俺は無意識にこう呟いていた


「海自一のヘリパイの称号は伊達じゃないみたいだな」


その時、若干のノイズの後で無線に聞き覚えのある声から通信が入った。


「木島一尉、聞こえますか?特殊作戦郡の近藤です。これよりヘリから降下し敵部隊を制圧します。フラッシュバンを使って援護してください」


「おぉ、近藤か!了解した。これより閃光手榴弾を使用する。それとな、俺の階級は三尉だ」


「失礼しました。木島三尉、宜しくお願いします」


元部下から頼まれたので何の抵抗もなくフラッシュバンを投げ込もうと思って踏みとどまった

そして後ろを振り返り状況を確認しようと顔を出し始めた山本達にハンドサインを送り対閃光ゴーグルを着用するよう指示をだす。


「畜生、風で火薬が飛んじまう。こんなんじゃ装填できないぞ!」


暴徒たちはまだ悪態をついている。早いところ逃げればよかったものを…

山本達がゴーグルを着用したのを確認したあと閃光手榴弾の安全ピンを抜き暴徒達の付近に投げ込んだ。
















2023年8月30日am8:35 人里(近藤三佐視点)


元上官と話すのは彼が部隊を離れた時以来だったが、声の感じを聞く限り彼は昔と変わらずにいてくれたようだ。あの事故から彼も立ち直ってくれたのだと思うとうれしい限りだった。


それはさておき任務に集中せねばならない。元上官の援護を取り付けておきながら失敗などしたら、それこそ笑いものだ。


閃光手榴弾で戦闘力を喪失した敵の制圧など我々にとっては造作もないことである。ファストロープ降下に手間取りさえしなければものの5分でカタが付く。


それに地上からの射撃に冷静に対応するばかりか、逆に暴徒を半ば制圧してしまったパイロットが操る機体だ。パイロットの木原一尉の腕は噂に聞いた以上のようだ。


もっとも…見事な回避運動の代償として機体は大きく揺れたわけだが、その辺は成果を鑑みて大目に見ることにしている。

こういった破天荒な操縦方法が彼の評価を分断させているであることはよく分かった。


「三佐、降下準備完了しました」


部下が装具の最終点検を終え報告してきた。


「了解した。地上からの合図を待って降下する」


部下に告げた丁度その時、ヘリの窓から強い光が差した。

今頃、地上の暴徒たちは自分の身に何が起こったのか分からないまま、麻痺した五感を取り戻そうと必死になっているだろう。


「よし、敵は閃光手榴弾により混乱していると思われるが一定の抵抗も予想される状況である。各員受傷事故に注意せよ…降下開始!」


即座に左右のキャビンドアが開き隊員たちがロープを伝って素早く降下していく。

恐らく俺が降りる頃には決着が着いているだろう…










2023年8月30日am8:36   人里(木島三尉視点)


「さすが特殊作戦郡だな。動きに迷いがない」


そんなことを言いつつ昔を懐かしんでいる自分が少し恥ずかしく思えた


「木島三尉、聞こえてますか?」


「あぁスマンどうした?」


「我々も彼等に加勢しますか?」


「要らねえよ、俺らが行っても邪魔なだけだ」


「そんなものですかね?」


「そんなもんだ」


そうだ、一般の隊員と特殊作戦郡の隊員じゃ訓練の量や技術が違う。

変に加勢しようと思っても邪魔なだけだ


「おい木島、高橋三佐から聞いたぞ。敵側に挑発行動をとったんだってな?」


ついさっきまで隣にいたはずの上官の声が唐突に聞こえてきた


「伊藤一佐、あれは相手に矛を収めさせるために仕方なくですね…」


「暴徒の指揮官に挑発的な言動を取ったらしいな」


「それは暴徒達の注意を自分に向けさせるために...」


「結果、民間人から人質を取られたと」


「......」


「ここが日本じゃなくて良かったな木島。下手すりゃ懲戒免職ものだぞ」


「...申し訳ありません」


「本当にその通りだ。残念ながら我が国の憲法においては武力による威嚇は禁止されている。本国の市民団体が知ったらえらいことになるぞ」


「こっ古賀海将!?」


いつの間にかこの場における最高指揮官まで寄ってきた

どうやら俺の想定以上に問題を起こしていたらしい


「古賀海将、木島に対するペナルティは何が良いと思いますか?」


その割には伊藤の顔がニヤついているように見える


「そうだなぁ。今回の出動で“いずも”の飛行甲板が多少なりとも汚れただろうからそこの掃除を命ずる。異論はないな?」


「…ありません」


「大変ですね木島三尉、“いずも”の甲板は全長248mもありますからね~大変ですよ」


俺の行動をチクった張本人が気の毒そうに声掛けてきたが…

正直、彼にも手伝ってほしい


「高橋三佐、他人事みたいに言わないでくださいよ」


「木島、まだペナルティは終わってないぞ」


「まだあるんですか!?」


「当たり前だ。今のは海上自衛隊からのペナルティで陸上自衛隊としてはまだ...」


「あのぉ…終わったんですが」


「「「あっ」」」


バラクラバを着用した隊員に話しかけられてようやく戦闘の終結に気付いた


「相手からの抵抗は?」


「閃光手榴弾が効いていたようでほとんど抵抗は有りませんでした。我の損害なし」


「そうか、ご苦労。暴徒はこの里の警察機関に引き渡してくれ」


「了解しました。その前に木島三尉と話がしたいのですが」


「構わないぞ。木島、ペナルティは後で伝える」


「お心遣い感謝します」


一佐が充分距離をとったのを見届けてから彼は口を開いた


「久しぶりです。毒舌大尉」


「お前その呼び方やめろって言ってるだろ。それに俺の今の階級は三尉だ。外国軍隊なら少尉だろ」


「いいえ、木島一尉は俺たちのなかでは永遠に毒舌大尉であり我々の上官です」


何となく込み上げるものがあったが、この感情は墓場まで持っていくことにした


「近藤三佐、特殊作戦郡を頼みます」


「木島三尉に敬語で頼まれるなんて昔は想像も出来ませんでしたよ。了解しました。任せてください」


近藤は直立不動の敬礼で答えた

すごく頼もしい表情だった


「ちょっと、コレあなた達がやったの!?」


声がした方向を向くと紅白の巫女服を着た見覚えのある少女が空を飛んでいた


「あんたは確か博麗...博麗...ハクレイ...誰でしたっけ?」


「霊夢よ!名前くらい覚えときなさいよ!!」


「悪いね、俺たちは警察じゃ無いんで」


「それで何の用ですか霊夢さん」


「何の用って私は里の人間に助けを求められたから助けにきたのよ。で、もう一度聞くけどコレあんた達がやったの?」


「そうですが…ご迷惑でしたか」


「里の中で流血沙汰はちょっとね…まぁいっか。私がやったら全員死んでたかもしれないわけだし」


「ハハハハ」


聞かなかった事にしよう


「あの~会談って何時からでしたっけ?」


「たしか10時からのはずよ」


「そうですか、ありがとうございます」


俺は改めてこの世界における女性の力の強さを知ることになった



「幻想自衛隊 ~我々は何を守るべきか~」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「戦記」の人気作品

コメント

コメントを書く