幻想自衛隊 ~我々は何を守るべきか~

メガネ2033

第17話 雑談

2023年8月19日pm1:00 〝おおすみ〟科員食堂  (木島三尉視点)


駐屯地設営の話が持ち上がってから陸自の隊員達は働き詰めだった

作業を担当しているのは普通科の隊員達なので本職の施設科と同じような作業をすることは難しいのだ

慣れないことをすれば疲れがたまるし、疲れは事故を誘発する

そんな訳で午前中作業にあたった隊員達は”おおすみ”の食堂で昼食をとりつつ休憩することが許されていた


「今から昼食ですか?」


「あぁ、小林一佐じゃないですか。どうかしましたか」


「少しお話をと思いまして」


「説教ならば間に合ってますよ」


「違いますよ。今日は蒸留施設の建設状態を聞こうと思いまして」


何故かわからないが、この珍しい海自の幹部とは良く昼食を共にすることが多かった

普通、海自の幹部達は士官室と呼ばれる部屋で食事を摂ることになっているらしいがこの艦長は例外らしい

毎回のように科員食堂に降りてきては列の最後尾に並んで食事を受け取っている

輸送艦の艦長などという偉い肩書を持つようには見えずこちらを見つけては気安く話しかけてくる

幹部にはあまりいないような人物だった


「あぁ、あれなら第4中隊と岩手の戦車隊が総力を挙げてやってますよ」


「こちらで頼んだ桟橋建設はどうなっていますかね?」


「できるだけやってますが、如何せん技術も人手も少ないので」


「すみません。無理を言ってしまって」


そして年下の部下にも敬語を使う徹底ぶりである

艦長の威厳なんて全く感じられない


「いえいえ、いずれ作らねばならなかったのですから。しかし、作業をしているのは施設科ではありませんので完成には時間がかかります」


「それにしては皆さんの作業が早いように感じますが…」


「それは我々が東北方面隊だからですかね。日頃から地域の雪まつりの支援をしているので他の隊より施設科と作業することが多いんですよ」


「頼もしいですね」


「労いの言葉なら私のような幹部ではなく部下達にお願いします。その方が士気の向上につながりますよ」


「三尉はマジメですね。私でよければいくらでも労いますよ」


「一等海佐の肩書を持つ人から直接褒められれば若い連中も喜ぶでしょう。いつの時代も上司に褒められるのは嬉しいものですから」


小林一佐に対応しながら米を描きこむ飯を平らげる。自衛隊の文化として飯は10分以内に食べることがほとんどなのでこの様に語りながら食べることには慣れない


「そう言えば例の会談について何か進展はないんですか?会議に出席したまでは良かったのですが、それ以降情報が降りてこないものですから」


「何だ。伝わってなかったのですか?面会日は8月30日に決まったそうですよ」


「横須賀出港から20日目に面会ですか」


「感慨深いですか?あぁ、それと向こう側の参加者も決まりましたよ」


「要人揃いですか?」


「ええ、紅魔館からレミリア スカーレットさん。博麗神社から博麗霊夢さん。妖怪の山から大天狗さん及び射命丸文さん」


「意外と知っている人が多いですね」


「案外そうでもないですよ。他には冥界から西行寺幽々子さいぎょうじゆゆこさん及び魂魄妖夢こんぱくようむさん。地霊殿から古明地こめいじさとりさんが出席するとのことですが彼らの情報はほとんどないのが現状ですし」


「会談を名目に我々を誘い込み一網打尽にする魂胆ってことですかね?」


「さぁ、上陸した後の警備は全て陸自の管轄ですからそっちに任せますよ」


「そう言う小林一佐はこのメンバーどう思います?」


「どう思うも何も…単純にお偉いさんを集めただけだと思いますがね。これが罠ならばわざわざ出席者のリストを寄越したりはしないでしょうし」


彼が言うからにはそうなんだろう

別に何の根拠もなく言っているわけじゃ無い

親しくなった海曹から聞いた話しだが彼は昔、情報保全隊や海幕監部に勤めていたことがあるらしく一部では情報のスペシャリストと呼ばれてたりもするらしい


「まぁ、警戒するに越したことはありませんからね」


それから暫くはお互い飯に集中していたが一佐はあたかも今思い出したというような調子で話題を振ってきた


「あっそう言えば君に関する噂を耳にしましたよ」


俺に関する噂ならもうどんな内容か見当がついているが一応確認をとってみる


「ほぉ私の?どんな内容なんですか?」


「君は特殊作戦群の指揮官だったんだって?」


あーやっぱりビンゴだ

この質問をされたのは彼が初めてでは無いから慣れている


「よくご存じで。やはり噂ってのは怖いですね」


「狭い艦内にいれば噂の広がりは早いからな…まぁいい。その噂というのは君が特戦群を離れた理由についてでね。心当たりはあるかい?」


「…ありますよ。ええ、あります」


「もしよければ当時の話を聞かせてはくれないか?」


「……どうしても聞きたいですか?」


しかし思い出したくないものに変わりない。思い出そうとすれば今でも胸の奥が痛む


「もちろんですよ。でなきゃこんな話題を飯の時間に振りませんから」


けれども下手に詮索されるより自分で話した方がマシなのも事実だ。完全に聞く態勢に入った小林一佐がここで退きさがるようにも見えない


「貴方という人は…いいでしょう。お聞かせしますよ、忌々しい過去の話を…」


俺は苦笑しつつ過去の苦い記憶を掘り起した



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コメント

  • ユウ・カジマ・スカーレット

    銃の威力見て「ヒェェェ!!」なんて面白くはないですしね!!

    1
  • ユウ・カジマ・スカーレット

    彼の第442連隊戦闘団に近いかもしれないですね

    1
  • メガネ2033

    特作群になるにはレンジャーは勿論のこと空挺や水路潜入などの高い戦闘能力を持つ者の他、医療や爆破などの特殊技能を持っている隊員が厳しい試験を得て選抜されるようです。
    レンジャーも極めて厳しい訓練を積んでいるのにそれすらも最低限の特戦群とはいったいどれ程の化け物なんでしょうね…

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  • ユウ・カジマ・スカーレット

    レンジャー持ち以上の隊員が・・・

    1
  • メガネ2033

    お久しぶりです。
    そうです。陸上自衛隊唯一の特殊部隊でもある特殊作戦群のご登場です。
    木島三尉の判断力が高いのも特戦群出身だから…という理由もあるようですね(^_^;)

    1
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