魔術学院最下位の俺が最強スキル絶対真眼を手に入れちゃいました。~必ず首席で卒業してみせる~
第18話 果たし状
「明日は授業が無いし明後日は魔術戦だァ、お前らに会うのは来週だアァ! 必ず走らせるから覚悟しておくのだァハッハッハ!!」
先生は豪快に笑いながら、豪快に扉を開け、豪快に演習室から出て行った。
俺も先生の出た後に、静かに自分の教室へと戻った。
そして教室の扉を開くと、目を丸くしたオリヴィアに話しかけられた。
「……あれ、今日はグラウンドで寝転がっていないのね」
「今日は面白い魔術を教えてもらったんだよ」
「へー、見せてよアベル」
オリヴィアは興味津々だ。
俺もその魔術は習得出来ているし、いいだろう。
見せてやる、ブレイヴ先生に習った俺の秘奥義を!
「じゃあこのペンを見ててね」
「うん」
俺は自分の筆箱からペンを取り出し、腰から杖を抜いた。
「『属性付与・炎』!」
そう詠唱し杖を振ると、俺の左手のペンが――
――ボウッ!
と燃え上がる。
「大丈夫? それ、ペンが燃えたりしないの?」
「ふっふっふ。安心して、燃えないよ」
この魔術は、魔力を薄く物体の上に張り、その上から『火』の初等魔術を発生させているから、魔術をかけられた物体自体に傷はつかない。
よく考えられている。
しかし――
「っあっつ、熱っ!!」
俺はペンから発せられる熱さに驚いて、ペンを落としてしまった。
「ははは、何してんのよアベル」
オリヴィアは腹を抱えて笑い出した。
「あっつー……。ペンが大丈夫だからといって、熱いのに変わりはなかったな」
「あはは、当然でしょ。でも使えそうねその魔術」
「……俺の手を火傷させかけるのにもう使えたけどね、はは」
そう二人して笑っていると、教室前方の扉がガラガラと開かれた。
入って来たのは暗い金の髪を一つに束ねた真面目そうな女性――ベルナール先生だ。
ベルナール先生が入って来た、という事はホームルームが始まるな。
俺は急いで自分の席へと戻った。
「……昨年も生徒会が行った、魔術戦マッチングが来週から始まりますので、相手を探している方は是非活用してください」
ベルナール先生が連絡事項を話し始めた。
しかし、失礼かもしれないが俺は特に耳を傾けず、窓の外を見ながら物思いにふけっていた。
「魔術戦の申し込みは木曜日まで可能ですが、魔術戦マッチングの申し込みは水曜日までなので、留意しておいてください」
……明日は待ちに待った学院ダンジョンの攻略だ。
お試しとは言え、万全の状態で挑みたいな。
何か特殊な持ち物とかいるかな?
「申し込みは生徒会室前か、魔術戦管理委員会所属の生徒に言って頂ければすぐに行えます」
食べ物と飲み物に魔石ランプ。
あとはマッピング用の紙がいるな。
それくらいなら家にもあるし、まぁ問題ないか。
「ではまた明日」
ベルナール先生は一礼して教室から出て行った。
これで今日の学院は終わりだ、帰ろう。
俺は鞄に教科書と筆記具と入れ、席を立ちあがった。
「ばいばいオリヴィア。じゃ、また明日」
「うん、じゃあね」
俺はオリヴィアに別れの挨拶をして、教室から出た。
そして校舎から出て、校門を抜け、学院から少し離れた所にあるカレンとの待ち合わせ場所に向かった。
「カレンは、まだいないな」
待ち合わせ場所にまだカレンはいなかったが、しばらく待っているとカレンはすぐに現れた。
それも何故か小走りで。
「お兄様ー!」
「どうしたのカレン、そんなに急いで」
「それが六限目の移動授業から帰ってきたら、私の机の中にこのような物が入っていたんですよ」
カレンは鞄の中から一枚の紙を取り出した。
俺はそれを受け取り、目を通してみた。
――――――――――
カレン・マミヤ、並びにその兄であるアベル・マミヤ。
お前達二人には何の関係も無い一人の男を拉致した。
彼を助けるか助けないかは、お前達の自由だ。
だがお前達二人は必ず来ると確信している。
場所はトロネコ通り25-5の三番倉庫。
今夜22時に二人だけで来い。
それと一つ忠告しておこう。
彼の身体に傷をつけたくなければ、詰所には連絡しない事だ。
――――――――――
「これは……」
「私達二人を呼び出しているようですね」
……まじか。
送り主は誰だ?
ざっと考えてみて、可能性は3つ――
その一つ目はヴェヘイル。
友人であるカインを殺したのが俺だとどこかで知り、その復讐の為に妹共々呼んでいる、というもの。
だがカインの件を知っているのはごく僅かで、実の妹であるカレンさえ知らない。
それをヴェヘイルが知り得る、なんて事があるだろうか?
もう一つは、あのおかっぱで小太りの男。
しかし俺達を呼びだす理由が思い浮かばないし、これは単に怪しいからだ。
しかも彼は行動力や度胸がある方だとは思えないし、どちらかというと呼び出される側に見える。
そして、最後の一つは魔族達。
後天的な魔族とはいえ、彼らの仲間であるカインを俺は殺したのだ。
だから復讐のために呼び出した、というのも考えられるし、単純に口封じをしようとしている線も高い。
「しかし……どうするべきか」
これから俺達が取れる行動はたくさんある。
連れ去られたという男を見捨てたり、詰所に連絡して解決して貰ったり、素直に二人だけで行ったり。
でも何が正解なのかは分からない。
もしも送り主が魔族とかだったら、俺達二人の行く末は暗い。
それだけはなんとしても避けたい……かといって困っている人を見捨てるのも心が痛む。
考えれば考える程、優柔不断になっていく。
「お兄様」
悩む俺を、カレンは真剣な表情で見つめてくる。
「私はお兄様がどうような選択をしようと、どこまでもついていきますよ」
その言葉と笑みに、俺は気持ちが少し楽になった。
「カレン……。……カレンはどうしたいの?」
「正直何が正解なのかはわかりません。でも、私は助けてあげたいです」
助けたい、そう望む気持ちはカレンも同じ。
そして何だかんだ悩みつつも、最終的には人の為に動き出す。
……朝も思ったけど、やっぱり俺達は似ている。
まぁそれもそうだろう。
たとえこの瞳が紅く染まろうとも、俺がカレンの兄であり、唯一の肉親である事に変わりはないのだから――
「カレン。二人だけで向かおう」
「はい、お兄様」
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