魔術学院最下位の俺が最強スキル絶対真眼を手に入れちゃいました。~必ず首席で卒業してみせる~
第11話 退院
「ありがとうございましたー」
病院の看護士さんに頭を下げる。
これでようやく退院だ。
俺は晴れ晴れとした気分で、病院の玄関から外へと出た。
月曜日の昼間だから誰も来てはくれない。
一人悲しく俺は帰路に着く。
家帰って何しようか?
たまには俺がご飯を作ろうかな。
「おい、そこな者よ」
後ろから声をかけられた。
ん?俺に話しかけているのか?
確認の為にも俺は振り向いてみた。
そこに立っているのは、俺と同じ紅い瞳の少女――
病的なまでに色白い肌に、上品に盛られた白い髪。
黒を基調としたゴスロリに、日差しが強くもないのに日傘を差している。
「えっと……俺のこと?」
「左様だ、久しいな」
「俺は初対面だけど……何か用かな?」
こんな少女に話しかけられる覚えはない。
この手の輩はハイトウッド先生で十分だ。
……まぁ先生は少女と言えるか怪しいけど。
「お主、魔族であろう?」
……ッ!?
何を言っている。
俺が……魔族?
この子、俺のことをからかってるのか?
「何を言ってるのかなお嬢ちゃん?」
「隠さんでもよい」
「いや俺は魔族じゃないって」
いやどう考えても魔族じゃないだろ。
俺は普通の家に生まれてるんだぞ。
「なら、ハーフか?」
「さっきから何を言って……」
「本当にわからんのか?」
少女は真剣な眼差しでこちらを見る。
「いやわかるわからない、とかじゃなくて俺は魔族じゃない」
「はぁ……お主は何も知らされておらんようだな」
ため息をつきたいのはこっちだよ!
急に呼び止めて意味の分からない言いがかりをしてきて、あげくになんなんだその態度は。
親の顔が見てみたいよ!
「小童、血を求めよ。でなければ次はわらわが勝つぞ」
その瞬間、強風が吹き荒れる。
俺は手で顔を覆った。
風が収まると――
「お前本当に何を言って……」
そこには誰もいなかった。
◇◇◇
「お兄様、大丈夫ですか? あーん、しましょうか?」
「い、いや、大丈夫だよ」
マミヤ家の夕飯。
カレンは学院から帰って来てからというもの、ずっとこの調子だ。
距離も近いし、甲斐甲斐しい。
「遠慮なさらずともよいのですよ」
「本当に大丈夫だって」
しかしスプーンを前に突き出し、目を輝かせながらこちらを見てくる。
うぐ……可愛い。
ま、まぁ、ちょっとだけなら――
「そういえばオリヴィアさんが会いたがっていましたよ」
「むぐ、むぐ……そうなんだ」
俺は手を使わず口元に食べ物を運んでもらう。
まるで子供のようだ。
でも……悪くないかも……。
「本当は今日病室に向かう予定だったらしいんですが、朝はダメですし昼から退院だったので……」
「…むぐ……まぁしょうがないな」
「その……オリヴィアさんとはどんな関係なんでしょうか……」
「…むぐむぐ……ただの友達だよ。ごちそうさま」
ようやく食べ終わった、
というより食べさせてもらい終わった。
「そうでしたか。……その、お兄様的にはどう思っていらっしゃるんですか?」
「うーん。ちょっと怖いけど可愛い、かな」
「ええっ!?」
急にカレンは立ち上がった。
そして綺麗な髪を振り乱しながら、慌て始めた。
「そそそ、それは、どういう!?」
「そのまんまの意味だよ」
カレンはその場に膝から崩れ落ちた。
その落ち込み具合には"ガーン"という音さえ聞こえそうだ。
「……でも、カレンの方が可愛いよ」
「あぁっ、お兄様……っ!」
カレンは手を胸の前に、何やら一人で感動している。
なんだか今日のカレンは感情の起伏が激しいな。
まぁ病み上がりだし心配してくれてるんだろう。
そして俺はそのままバイトへと向かった。
サラスティーナさんに遊ばれながらも、家に帰るころには昼間の少女のことは忘れ
ていた。
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