魔術学院最下位の俺が最強スキル絶対真眼を手に入れちゃいました。~必ず首席で卒業してみせる~
第8話 オリヴィアの魔術戦
ここは第3闘技場の控室。
俺はカレンに妙な気まずさを抱えたまま、翌日を迎えていた。
本当は登校している間に謝っておきたかったんだけど……。
結局、謝る事は出来なかった。
魔術戦が終わったら、絶対に謝ろう!
今、そう心に誓った。
「何ぼけーっとしてるの?」
俺にそう尋ねてきた綺麗な赤い瞳の少女は、その長く赤い髪を揺らしながら準備運動している――オリヴィアだ。
以前、カインから申込書が入れらていた時、俺とカインとの試合前に時間があるので、オリヴィアの魔術戦を見る約束をしていた。
俺はその闘技場の控室に応援に来ているんだが……。
正直昨日のカレンのことで頭が一杯……いや、頭がおっぱ……なんでもない。
「……あぁ、いや大丈夫だよ」
「本当? 体調が悪くて負けた、なんてのは無しにしてよ、アベル」
「大丈夫大丈夫。今日もおいしいご飯を食べて元気だから」
あれ以来……って言っても一日しか経ってないけど、俺たちは呼び捨てで呼び合うようになっていた。
少し恥ずかしい気もするけど、仲の良い友達みたいで……かなり嬉しい。
「それより、どうしたのオリヴィアのその恰好」
オリヴィアは制服の青い魔術衣装を身に着けていない。
その代わり着ているのは、白いシャツと青い短パン、という凄く動きやすそうな服だ。
明らかに今から魔術戦をする者の服装じゃない。
「んー。ま、見てからのお楽しみよ」
「えーお預けかー」
「その辺は試合で見せるから。観客席で楽しみにしてて」
そう言ってはにかむオリヴィアは、少しかっこよかった。
◇◇◇
「うおぉ……結構人いるな」
控室から出て観客席に向かってみると、既にかなりの観客が座っていた。
席が全て埋まっている訳じゃないけど、ここまで入ってるって事は……オリヴィアはかなりの有名人なのだろう。
「……取り合えず、ここでいいか」
俺は手頃な席を見つけ、そこに座った。
観客席は、魔術戦を行う闘技場の周りを囲うように作られている。
それに後方の席に行けば行くほど高さが高くなるため、ある程度どこの席でも魔術戦の様子を見ることが出来る。
親切設計だ。
俺が観客席に座って魔術戦が始まるのを待っていると、闘技場の中央に藍色の魔術衣装を着た男性がやって来た。
学院の教師だ。
魔術戦の審判は学院の教師が行っている。
「両者、前へ!」
審判の先生は大声を出す。
それによって闘技場左奥の扉からは少しお腹の出た男子生徒が、右奥の扉からは赤い髪の女子生徒が出てくる。
オリヴィアと、その対戦相手だろう。
「両者、準備は良いか?」
審判の先生の問いかけに二人は頷く。
そして腰から杖を抜いた。
……始まるな。
「よし。それでは――――始めぇ!!」
試合開始の合図。
始まった、魔術戦が。
そして、先に動いたのはオリヴィアだった――
「舞い上がれ『昇風(エアロウィンド)』」
オリヴィアは凛とした声と共に杖を振った。
「っうわ!」
すると男子生徒の地面から強力な風が発生し、有無を言わさず彼の身体を空中へと連れ去った。
「おぉ!」
それを見て、俺の口からは驚きが漏れた。
オリヴィアの魔術展開速度は速い。
『昇風(エアロウィンド)』は、下位魔術である『突風(ブラストウィンド)』を自分の正面だけでなく、好きな場所から放つことの出来る中位魔術だ。
強力な魔術ではあるのだが、中位魔術ともなれば魔術を展開するまでにかなりの時間を要してしまう。
しかしオリヴィアはそれを一瞬で行った――
これだけでもオリヴィアの実力の高さが窺える!
「くそおぉお!」
空中でバランスが取れず、もがく男子生徒。
この試合はもうこれで決まりかとも思ったが――
「『石化(メタモルロック)』!!」
彼の足が石となり、重量のおかげか地面へと一気に落ちていく。
そして――
――ズガガアァン!!
と、豪快な音を立て、無理矢理地面に着地した。
上手い……っ!
おそらくあれは彼のスキルだろう。
それを上手く活用したな……!
「ふっふっふ、甘いなオリヴィア! これが俺のスキル……」
――バチィン!!
得意げな男子生徒の言葉を遮るように、電撃の矢が放れたれた――
これは下位魔術、『雷矢(サンダーアロー)』だ。
まだ話している途中だったいうのに……容赦ないな。
「……っく!!」
おぉ!!
岩にした腕で顔を覆っている!
すんでの所でガードが間に合ったようだ。
あの男も、かなりやるな!
「……っこっんの!!」
そして男はガードを解き、杖を目の前に構える。
その動きも速い、が――
「……え?」
男の目の前に対戦相手であるオリヴィアはいない。
その代わりに――
「舞い踊れ『纏風(チャンフォン)』!」
――ガンッ!!
風で高速化された後ろ回し蹴りが、男の後頭部に叩き込まれた。
「すごいな……!」
男子生徒は気が付かなかっただろうが、観客席にいる俺には何が起こったのか分かっている。
話は単純だ。
『雷矢(サンダーアロー)』のガードの為に顔を覆った隙に、風魔術で一気に後ろに回り込まれ、渾身の蹴りをくらった――ただそれだけだ。
しかし話が単純とは言え、
「ガハッ……ッ!!」
あまりの衝撃に耐えられなかったのか、男はその場に膝から崩れ落ちた。
「勝負あり!」
審判の先生から声が上がる。
それによって――
「「「うおおおおぉぉぉぉ!!!」」」
観客席の生徒達から声が上がった。
確かにあんなすごい試合を見せられたら誰だって興奮する。
「ナイス! オリヴィア!」
俺も負けじと賞賛を送った。
あんまり大声出すのに慣れてないから、多分ちっちゃいけど……。
でも何はともあれ、オリヴィアは勝ったんだ。
俺も頑張らなくちゃな……。
「よし!」
俺は気合を入れてその場を後にし、第10闘技場の控室へと向かった。
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