創作・怪談話

ぴえろ

1話

※作中の登場人物はAと置いています。
また、これらは現実とは一切関係ありません。

これは私が小学校低学年の頃にあった話です。
私は今でもその時の出来事を忘れられません。
その日は懇談会か何かで学校がたまたま早く終わった日でした。梅雨時でしたので、少しジメジメとした空気が漂っていました。
その日、友達と遊ぶ約束をして学校から下校しました。
私の学校は小高い山の頂上にある、割と最近、といっても60年ぐらいたった学校でした。
私の帰り道には途中に、木々に覆われた薄暗い神社があるんです。まだ当時は幼かったので怖くて、いつも見ないようにして通り過ぎていました。
いつものように頭の片隅に怖いなぁという思いが渦巻きながら通り過ぎようとしたんです。私もなぜその時立ち止まってしまったのかよく覚えていないんですが、確か前を歩いていた人が急に転んでしまったんです。
若い女性の方でした。ですが、私は物凄く怯えたんです。まだ昼間で太陽も出ているのに、目の前で転んだ女性の足元に影のような物が居たんです。
最初は女性の影かと思いました。しかし、どうもおかしいんです。影なら普通足を中心にグルグル回らないはずです。しかし、その影のような物はグルグルと回り続けていたんです。
私は幽霊は昼間は絶対に出てこないと思っていたので本気で怯えました。
すると、転んだ女性が擦りむいた部分を抑えながら立ち上がったんです。その瞬間にピタリとその影の動きが止まりました。
その女性はそのまま歩いていったんですが、その影はその場にずっとあったんです。周りに何も無いコンクリートの道路の上にポツンと影が1つ。
私はそれをじっと見ていたんです。
すると、その影がいつも見ないようにしていた神社の方にスススッと動いて行ったんです。私はそれをつい目で追ってしまい、神社の方を見てしまいました。
その時、私の目に映ったのは、おびただしい数の影が神社の中を動き回っているという光景でした。パッと見ただけでも数十はあったと思います。グルグルと円の軌道を描いて動いているものや、規則性がなく、ただ適当に動いているもの、木の幹を昇り降りしているものなんかもありました。
私は驚いて、「うわっ!」と声を上げてしまったんです。
私が声をあげた瞬間、動き回っていた影たちがピタッと動きを止めたんです。
時間にして数秒だったんでしょうが、私は数十分にも数時間にも感じました。
その一斉に止まった影たちが、今度は私めがけて物凄い速度で近寄ってきたんです。
私は怖くて、来た道を全力で戻って行ったんです。
影たちはずっと追いかけて来ていて、すぐ後ろまで迫っていました。すると、急に「A!どうしたの?走ってきて」と声がかかりました。顔を上げると懇談会が終わって、家に帰宅する途中の母親がいました。
全身汗びっしょりで、泣きながら走ってきた私に母は心底驚いていました。
私は安堵して、その場で座り込んで泣き出してしまいました。
ひとしきり泣いて、落ち着いてから後ろを振り返ったんですが、その時には影たちはもういませんでした。そのまま母親と共に家に帰ったのですが、途中でまた神社の前を通ったんです。やはり気になってしまい、母親の影に隠れながらそっと神社の中を覗き込んだんです。しかし、神社の中には何もなく、ただ薄暗いだけでした。
そして母親の方を見ようと顔を上げようとした時、視界の端に一瞬だけ影がいたような気がしました。私は怖くてそれ以上は覗けませんでしたが、あの影たちは一体なんだったのでしょうか
また、あの時母親がいなかったら私は今どうなっていたのでしょうか
それは、皆様のご想像にお任せ致します。

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