神聖具と厄災の力を持つ怪物

志野 夕刻

九十五





 四人は、ミレイのただならぬ様子を見て、緊張と警戒した表情をしていた。

 ミレイの叫び声が響く中。彼女の体から、靄が発生していく。
 四人は更に警戒を強める。
 すると、ミレイに異変が起きた。
 彼女の小柄な体が、筋肉隆々に大きくなっていき、獣の体毛が生えていく。
 顔は、みるみる変わっていき、やがて。

 そこには、牛頭の怪物が立っていた。
 「これは、ディザスター······ミノタウロス······?」
 シングがほうけていると、ミレイだったミノタウロスが、断罪の大斧を振り下ろしてきた。

 「あぶねぇ!」
 ヴェルストは咄嗟に、シングに覆い被さるように共に回避する。
 「僕はどうすれば······。戦うしかないのか?」
 シングの様子を見かねて、ヴェルストは一喝するのだった。
 「てめぇ、しっかりしやがれ! あの女は、ディザスターになったら止めてくれる事を望んでるはずだろが!」

 シングは、我に返ったように表情を変える。「······そうだね。ありがとう、ヴェルスト」
 シングは立ち上がる。
 「礼なんて言うんじゃねぇ」
 ヴェルストも立ち上がると。ミノタウロスは、赤い瞳で二人を睨んでくる。

 「ミレイ、君を······いや、ミノタウロス、お前を止める!」
 シングは鋭光の槍を構えるのだった。


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