神聖具と厄災の力を持つ怪物

志野 夕刻

九十





 ミレイはウロボロスの出方を窺う。ヴェルストもシングも同様だった。

 そこへ、ウロボロスが横薙ぎに黒いブレスを放つ。
 「危ないです!」
 アイリスの声が響き、複数の光が相手を撃ち抜いた。
 身体をすり抜けていくが。

 だが、気を反らすことに成功したようで、ブレスが瞬時に消える。

 更にリアが、叫ぶ。
 「マジック・ミスト!」
 すると、魔法によって靄が一帯に漂いだした。

 「今の内です! こちらへ!」
 アイリスを先頭に、ウロボロスから距離を取るため、その場を離れる。



 「あんなの反則じゃない! 攻撃をすり抜けられるなんて······!」
 「そうですね。あれでは打つ手無しでしょう」
 アイリスは冷静に言いつつ、次にシングへ質問する。
 「シングさん、王家の生まれでしたよね。何か伝えられてる事は?」

 その問いに、シングは暫し考えているのか、黙っていた。

 程無く、口を開く。
 「そうだね。······最後の最大の災厄、光で照らし、払わん······」
 「何です? その言葉は?」
 アイリスの問いに、シングは。
 「幼い頃から、聞かされていたディザスターの文献の一節だよ。これは、ウロボロスに関する記述で······」

 「じゃあ試しに、光で照らしてみたらどう?」
 ミレイは冗談混じりに言う。
 「ミレイさん、バカなリアでも分かるのです。そんな簡単な訳······」
 「いえ、試してみましょう。もしかしたら······」
 アイリスは思いの他、真剣な表情で冗談に食いついた。

 「何言ってるのよ! リアの言う通り、通じる訳ないじゃない!」
 ミレイは、自身で言った冗談を否定する。
 「いや、試してみよう。何もしないよりは良いさ」
 「シング、あんたまで!? ······分かったわ。どうなっても知らないわよ」
 ミレイは、渋々同意する。



 五人は再び、ウロボロスと対峙していた。


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