神聖具と厄災の力を持つ怪物

志野 夕刻

八十





 振り下ろされていく剣。迫った時。

 すんでのところで、シングは槍の柄で受け止める。キィィン! と、ぶつかり合う金属音が鋭く響いた。

 「まだだ! 負けられない!」
 シングは槍の柄で、相手の剣を押し返していく。
 すると、ライアットの持つ剣が、反動で勢い良く後ろへ押された。
 シングはすかさず、槍の穂先で薙ぎ払う。
 上体を反らされて、回避されるが。

 「ふっ!」
 ライアットは、体勢を整えすぐに、斜めに剣を振るう。
 シングは武具の柄で受け止め、そのまま。
 相手の剣の腹に槍を走らせながら、斜めに穂先の刃で切った。
 右肩を浅く切られ、ライアットは距離を取ろうとする。が、シングは続けて、槍で突く。

 キィン! ライアットは、剣で槍を斬り払い、防いだ。次に返し様、剣を右へ振るう。
 シングは、横に転がってかわす。
 すぐに、斜め上へ槍で切る。
 ライアットは、その攻撃を後方へ跳ぶ事で、回避。
 したが、すぐに、剣を引き素早く突撃していく。
 シングは、槍を切り返そうとするが、相手の方が速い。

 「なら、咲け!」
 シングの槍の刃から、長く光の棘が生え、進行を阻む。だがライアットは、跳躍し迫ってくる。
 シングは、迎え撃つように鋭光の槍を構えた。

 互いに武器を振るい、次の瞬間。
 ライアットがシングの後方へ着地した。「シング王子······」

 シングは、悲しそうな表情をする。
 「あなたは、何で······」

 ライアットは、フッと嬉しそうに笑みを浮かべた。
 「······強くなりましたね」
 彼は、片膝を突く。
 良く見れば、ライアットの右肩に刺し傷があり、血が流れていた。
 「私の敗けです。シング王子······」


「神聖具と厄災の力を持つ怪物」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「ファンタジー」の人気作品

コメント

コメントを書く