神聖具と厄災の力を持つ怪物

志野 夕刻

七十八





 数十人の兵が吹っ飛ばされたのを見て、王国の総指揮官は驚いた。
 「なっ、何が!?」

 ミレイ達も驚愕の表情を浮かべている。
 「何が起こったのよ!?」
 いや、シングだけは、緊迫感のある表情をしていた。
 「まさか······」

 その時帝国軍の中から、前へ進み出る者が一人いた。
 味方敵、同様に動きが止まっているので、足音が良く響く。
 その姿がはっきりと見えた時。

 ミレイ達は更に驚きの表情をしていた。
 「あの方は、救済の杯の時の······」
 「そうなのです!」
 「ライアット・エクセター・アンセル······」
 シングは、数十人の兵を斬り飛ばした男、ライアットの名を呟いた。
 すると、その相手に向かって近付いていく。

 「シング、あんた!? まさか······」
 ミレイは驚いた後に、心配な表情をする。
 「大丈夫さ、ミレイ······僕は勝つ」
 シングが、声の届く範囲に近付くと、ライアットは言葉を発した。
 「シング王子······何しに来たのですか? 貴方は私に勝てないと分かってる筈です」
 「確かに、僕は一度あなたに負けている······それでも、勝って見せます。あなたが、僕の元・指導騎士だろうと先導の騎士だろうとしても!」
 シングは、鋭光の槍を構える。

 ライアットは、ふっと微かに笑う。
 「どうやら、迷いは無くなった様ですね。良いでしょう」
 ライアットも再び、装飾の入った長剣を構えた。


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