神聖具と厄災の力を持つ怪物
七十四
その通路を駆ける音は、ミレイの寝室の扉の前で止まる。
すると突如、扉が開かれた。
「ミレイ、大変なんだ!」
そこにいたのはシングで、酷く息を切らした様子だった。
「なっ······どうしたのよ、そんな慌てて?」
「大変なんだよ! 聴いてしまったんだ······又、ディザスターが現れたって!」
その言葉で、ミレイは顔色を変える。
支度を整えたミレイ達五人は、国王のいる大広間に集まっていた。
「で、どうゆう事よ? ディザスターが又現れたって?」
「そう急くな、ミレイ・リィンザー。その事なんだが、ディザスター、ヒュドラが現れた。又、お前等の力を貸して貰うぞ」
国王は、思案するような表情をしていた。
「当然、倒すわよ。······にしても、その顔は何? まだ、何かある訳?」
国王は、視線を向けるが中々、答えない。
そこで、魔法使団長のレナードが発言する。
「その事ですが」
「良い、レナード。俺から伝える」
ようやく、国王が声を発した。
「ハッ······」
「さて······率直に言おうではないか。どうやら、アルドーク帝国の軍も侵攻してきていてな」
反応は様々だが、五人は驚く。
「しかも、ディザスターと共に行動しているらしい」
「本当なんですか? ディザスターと一緒に行動を? 帝国にとっても、ディザスターは敵なはずでは······」
シングは、信じられないといった様子だ。
「残念ながら、今までの現れたディザスターも帝国の仕業だろうな。現に、ディザスターと同位置にいて、戦いになってないのが、その証拠だ」
暫し、重い静けさが続く。
ふと、ミレイは片方の手のひらに、拳を打ち付けた。
パァンッ! と音が響く。
「でも、チャンスじゃない。ようやく、帝国の悪事が分かった訳だし。倒すだけよ」
するとシングが笑う。
「ミレイらしいね。そうだね、帝国軍を倒そう」
「リアも手伝うのです!」
アイリスも上品な声で。
「でしたら、私も力添えさせて頂きます」
「オレもやってやらなくもねぇ」
ヴェルストのやる気のない言葉に、ミレイは。
「どっちよ!」
◇
太陽は東から真南に達していた。
王国軍などの準備も整い、都の門の外に揃っている。
ミレイ達も軍用の馬車に乗っていた。
「では、全軍出発!」
指揮官の声が響く。
「いよいよね」
「うん、そうだね」
「なのです!」
「はい」
「······」ヴェルストは、欠伸をしている。
「敵はヒュドラと帝国! やってやろうじゃない!」
ミレイは、勢いのある声を響かせた。
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