神聖具と厄災の力を持つ怪物

志野 夕刻

七十三





 ヴィンランド国の王都に戻ってきて数日が経った。

 何やら王宮は、賑やかな雰囲気を醸し出している。国王や宰相、国の重鎮が集って、片手にグラスを持ち、ディザスターが討伐されたのを祝っていた。

 勿論その場に、ミレイ達五人もいる。

 一人、その場から抜ける者がいた。
 ミレイだった。

 彼女は、王宮の外に出てゆっくりと一息吐いた。
 「やっぱり、あーゆう場は疲れるわね」
 その時、駆けてくる足音が聴こえる。
 ミレイは振り返り、誰か分かると微笑む。
 「何よ、あんたも疲れたの?」
その誰かは、爽やかな笑みを浮かべ答える。
 「違うよ。ミレイが出てくのが見えたからね。それに僕は、ミレイと違って気疲れはないさ」

 「じゃあ、何よ?」
 「うん、少し話もしたいと思ってさ」



 暫く、夜風が吹く音のみが響く。
 シングは、安心したような表情をし、口を開く。
 「ミレイ、これで元に戻れるね」
 「そうね······だけどこれで、あの大斧を振るうことも無くなるわね。シングを守る力ともおさらばよ」

 「······うん、けど本当に良かった。ディザスター化する心配はないんだからさ。······ミレイ。話があるんだ」
 「何?」

 「ミレイ。元に戻って、僕達の国に帰ったら、一緒に国を王都を、復興するのを手伝ってほしいんだ」
 「それって······」
 ミレイは思わず、頬を赤らめた。
 シングは、ゆっくりと片膝を突いて、彼女の片手を取る。
 「うん、僕はミレイの盾として、君を護っていきたいと思ってる。この先ずっとね」

 ミレイはそっぽを向く。その顔はかなり、朱色に染まっていて、それを隠すためだろう。
 「そう! だけど、あたしと結婚したいとして、理由は何?」
 「それは、ミレイが好きだからだよ」
 「なんで好きなのよ?」
 そこでシングは、立ち上がって口を開く。

 「それは、ミレイの素直じゃない所とか、真っ正面からぶつかってく所が······」
 「あんた、本当にそれ、好きなところ?」
 ミレイはいぶかしがる。

 「本当だよ。何よりミレイは、危なっかしくて護りたくなるんだ」
 「あんた······」
 「ミレイの事が好きなんだ。これでも、足りないかな?」
 ミレイはその言葉で、頭があまりの熱さでショート寸前だった。

 「あたしは······まあ、それほど言うんだったら、一緒になってあげなくても良いわ」
 「ミレイ······」
 シングは、彼女を抱き締めようとする。
 だが。

 「良かったのですぅ~。リア、感動しました」
 その場にリアがいたのだった。
 「リア、あんた! いつの間にいたのよ!」
 「ミライさん、良かったのです。リアは、プロポーズの辺りからいたのですよ」
 「そんな時からいたのね······」
 ミレイはあきれ顔をしたのだった。



 夜は更けていき。



 翌朝、待ちに待った日がきた。
 ディザスター化の進行を解くための特別な日だ。

 何やら、通路を走る音が聴こえる。
 ミレイは、「何······?」とゆっくりと状態を起こした。


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