神聖具と厄災の力を持つ怪物

志野 夕刻

六十六





 その近付く何かは、ヴェルストだった。彼は、シングの真下まで来ると、受け止める。
 あとは、宙を旋回しつつ下降し、着地した。ヴェルストはシングを下ろす。
 「シング、大丈夫!?」
 ミレイは近付き、声を掛けた。
 「ああ、何とかね」

 「んな事より、あれを見てみろ······お前の攻撃、効いたみてぇだ」
 ヴェルストは上へ顔を向ける。
 ミレイとシングも、その方向を仰ぎ見た。すると、アジ・ダハーカの右側の頭部は項垂れている。
 瞳の光も失われていた。

 「あんた、やったじゃない!」
 ミレイはシングの背中を叩く。
 「うん······だけどまだ、倒した訳じゃない。僕の読みだと、これでさっきの厄災の力は使えないと思うけど」
 「そう······じゃあ行くわよ!」
 ミレイは先に駆け出し、アジ・ダハーカの前肢を、垂直に勢い良く足で伝う。
 ついでに断罪の大斧を下段に持ち、切りつけていく。
 駆け切りつけ、肩に到達すると更に、背中を横断するように大斧で切っていった。

 反対の肩まで達し、するとミレイは飛び降りる。
 続けて代わるように、シングがアジ・ダハーカの胴体の真下に来ていた。
 彼は、鋭光の槍を上へ掲げ、叫ぶ。
 「貫け!」
 その言葉と同時に、武器の先端から光子状の棘が伸び生えていく。
 光子状の棘は、胴体に刺さっていって、背中をも貫いた。
 だがまだ、終わらない。
 「咲け!」
 更に、無数の棘が内部から生え貫く。

 アジ・ダハーカは、怒りを感じさせる咆哮を上げた。
 どうやら、これだけでは倒せないらしい。その真ん中の頭部の両目が、紫色に光り変わる。


「神聖具と厄災の力を持つ怪物」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「ファンタジー」の人気作品

コメント

コメントを書く