神聖具と厄災の力を持つ怪物

志野 夕刻

六十一





 ミレイは駆けながら、断罪の大斧を下段に構える。
 次の瞬間、掛け声と共に大斧を振り上げていく。
 振り切ると、斧の刃部分から光の斬撃が曲線を描きつつ、飛んでいった。

 光の斬撃は胴体辺りに命中する。が、僅かの傷しか与えられていない。
 「こんなんじゃ駄目ね」
 続けて、シングが前に駆け出ると、鋭光の槍を地面に突き刺し、上へ跳ぼうとする。
 その時、槍の穂先に光子状の棘を生やして、それを伸ばしていく。
 みるみる、シングは上空へ跳んでいき、長く棘を生やした槍を構える。
 アジ・ダハーカに迫る中、「おおおおおおっ!」と叫びつつ、鋭光の槍で薙ぎ払おうとした。
 その瞬間、長い光子状の棘の側面から、幾つもの同じ棘が生えていく。

 すると、複数の棘がアジ・ダハーカの首に突き刺さる。
 「どうだ!?」
 シングは光子状の棘を消して、地上へ落下していった。
 落ちてくる彼を、ミレイは受け止める。その際、ズシンッ! と衝撃を感じさせる音が響く。
 「あんた······無茶するわね」
 下ろして貰ったシングは、その言葉に答える。
 「無茶する程じゃないと、あれには勝てないさ」
 「そうね」

 一同は、上空にいるあれの様子を見る。すると、アジ・ダハーカは咆哮を上げていく。
 「まだ、物足りねぇってなら、喰らいやがれ!」
 ヴェルストは、いつの間にか巨大な竜巻の槍を展開させていた。
 拳に纏った、竜巻の槍を押し出しつつ叫ぶ。
 「リベレイション!」
 その魔法は勢い良く放たれ、相手に向かっていく。
 アジ・ダハーカは迎え撃つように、魔法陣を宙に展開させ、そこから雷を放つ。

 ぶつかり合う竜巻の槍と雷。

 轟くような衝撃音が響く。
 その影響で地上にいる一同へ向かって、風が吹き荒れていった。
 「なんて風よ!」
 ミレイは腕で顔を覆う。
 「凄いのです~!」
 リアも堪らないといった様子だ。
 程無くして、ヴェルストとディザスターの魔法が相殺されて、消えていく。
 地上への風もやんだ。

 「ちっ、随分な力を持ってやがる」
 ヴェルストは、忌々しそうにアジ・ダハーカを睨む。
 「まだです!」
 アイリスは、首元の神罰の十字架を握り締めて、軽く掲げた。
 「神罰の光よ······」
 その言葉と共に、更なる上空からアジ・ダハーカへ向け、無数の光が降り注いでいった。


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