神聖具と厄災の力を持つ怪物

志野 夕刻

五十八





 レナードの言葉を聞いて、五人は目を見開き驚いている。程無くして、ミレイは口を開く。
 「······いよいよ、最後のディザスターって訳ね。これを倒せば、この角と尻尾ともお別れよ」
 するとレナードは目元を細めて反論した。
 「いや、それはどうでしょうか?」
 ミレイは疑問に思い、問い返そうとする。だが、リアが先に発言した。
 「どーゆ事なのです、師匠?」

 「分からないのならいいです······」
 その言葉に、煮え切らないミレイは、追及する。
 「気になるじゃない······教えなさいよ」
 レナードは、ふぅ······と一息吐くと答える。
 「······良いですか? 二七〇〇年前、現れたディザスターは、五体です。という事はまだ······」
 「現れるかもしれねぇって訳だろ?」
 ヴェルストは、続きをそう補足した。

 「その通りです······なので油断はなさらぬようしていて下さい」
 そこで国王が声をあげる。
 「話は終わったか? では、出陣の準備が出来次第、出るぞ! 幸い、こちらには、新たな神聖具を持つ者達もいる。アジ・ダハーカといえど、勝てるかもしれん」
 「ですが、油断は禁物ですぞ、陛下」
 ウォルソン宰相は釘を指した。
 「ああ、分かっているとも、爺」



 完全に朝日が昇り、かなりの時間が経過した時。
 宮廷の外に王国軍、魔法使団や神道兵、神官達が揃っていた。
 ミレイ達もその場にいる。

 暫くして、国王が姿を現し皆の前に立ち止まった。
 緊張感のある面持ちで、一同を見渡すと。
 口を開く。

 「これより、アジ・ダハーカ討伐のため、出立する! 尚、もしものため、俺は宮廷に残る! 魔法使団長グリウォンもな!」
 その言葉を聞いて、ヴィンランド王国軍と魔法使団がざわつく。
 「嘘でしょ······?」「魔法使団長なしでなんて······無理なんじゃ」

 その不安と動揺を隠せない面々を、国王はなだめる。
 「しずまれ、安心しろ! こちらには、神聖具を持つ者達が四人もいるからな! 勝利は見えている!」
 すると皆から、「おお、頼もしい!」「これなら勝てるぞ!」等と声が上がる。
 「めんどくせぇ······」ぼやくヴェルスト。
 「リアはその中に入ってないのです······」リアは肩を落とした。
 ミレイは彼女を励ます。
 「大丈夫よ、リア! あんたの実力を見せてあげなさい!」
 「その通りです。リアさんなら、出来ますよ」
 アイリスも、ミレイの言葉に賛同した。
 「そうですか?」リアは涙目で二人を見る。ミレイとアイリスは頷く。
 「なら、リアは頑張ります!」
 リアは一転、笑顔を見せた。
 「······」その中でシングは、俯き加減で心あらずといった様子だった。

 「では、行ってくるが良い!」
 国王の声で、ミレイ達は馬車に乗り込む。
 程無くして、出立するのだった。



 一同は、北へ向けて進軍していく。
 王都から離れた所で、迎え討とうと考えているが。
 その前に、ディザスターが王都へ向かってしまっては、もとも子もない。
 不安を抱えながら、時折北の空を確認する指揮官。
 遠くの空には、謎の飛行生物が見える。恐らくあれが、アジ・ダハーカだろう。






 アジ・ダハーカとの距離は、先程よりは縮まっていた。
 先導していた指揮官が声を上げる。
 「よし、ここで迎え討つぞ!」
 王国軍等が陣形を整えていく中、シングは一人、近くの森林に入っていった。
 「あれ、シングさんがいないのです?」
 リアは気付く。
 「そういえばそうね······何処に行ったのよ?」
 ミレイも今更気付いた様子で、若干気掛かりだった。

 「シングさんなら、そこの森林に入って行きましたよ。顔色が優れないみたいでしたが······」アイリスは、見ていたようで話してくれた。
 「それは大変なのですよ! ミライさん、出番です!」
 「出番って······どうしろっていうのよ」珍しくミレイは弱気だ。
 「リアじゃ駄目だったのです······でも、ミレイ・・・さんなら、大丈夫なのです!」
 「あたしでも無理よ······」
 そんなミレイを、リアは優しく抱き締める。
 「全力でぶつかったのですか? 戦いの時のミレイさんは、とても強いです······いつも、全力で······」

 ミレイは、ハッと口元を開いた。
 「そうよね······こんな弱気なんてあたしらしくないわ!」
 「ミレイさん!」リアは、抱き締める力を更に強める。
 暫くして、リアの抱擁が終わると、ミレイは礼を言う。
 「感謝するわ、リア! じゃあ、行ってくるわ!」



 森林へ入ってから、歩く事少し。
 ミレイは、シングを見付けた。木の幹に寄り掛かって、座っている彼を。

 ミレイは、木の枝を踏んでしまい、その音でシングに気付かれる。
 「ミレイ······」
 顔を上げて、そう声にするシングは、弱っているように見えた。


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