神聖具と厄災の力を持つ怪物
五十二
「ここは······」
ミレイは、見覚えのある場所に声を洩らす。
「久方ぶりではないか」これまた、聞き覚えのある声に、ミレイ達は振り向く。
そこには、豪奢な椅子に座っている一人の者がいた。
「しかし随分、仲間が増えたものだな」
「お初にお目にかかります、ヴィンランド国王陛下······私はアイリス・フィーストと申します」
「挨拶は構わん。いきなりだが説明からさせて貰うとしよう。急いでるのでな」
国王陛下は、横に控えている宰相に目配せする。宰相は、頷くと口を開いた。
「そこにいるグリウォンから聞いたと思いますが、救済の杯は盗まれて御座いまして。そこでシング様達には、神聖具を奪い返してほしいと思っております」
「僕達にですか······」
シングは何処か迷いのある表情だ。
「左様です。あとは、グリウォンから説明をお聞きくださるようお願いします」
すると、その場にいたレナードが引き継ぐように口を開く。
「さて、皆さん。······神聖具を盗んだ者は今、旧ランカスター王国内のある都市にいます」
「何でそんな所に······どうゆう事よ······?」
ミレイの問いに、レナードはすぐ答える。
「その都市の場所がアルドーク帝国へ繋がる国境にあるのです。きな臭いと思いませんか······?」
言葉を遠回しにするレナードに対して、ミレイは訝しがる。
「つまり、何な訳?」
レナードが答えようと口を開く前に、ヴェルストは発言する。
「つまりだ······要は、帝国が絡んでるかもしれねぇ訳だろ?」
「はい、そういう可能性もある訳です」
「何だ······それならそう言いなさいよ」
ミレイも納得した所で、レナードが咳払いをする。
「それでは早速、皆さんにはその場所へ行って貰います。魔法を使うので一瞬ですから······ご安心を」
「ちょっと待って下さい! リア達は今、来たばかりなのですよ! 又なのですか!?」
「そうよ! リアの言い分も最もだわ!」
リアとミレイは声を上げるが、レナードは構わず詠唱を開始した。
「汝らを送るは、輝く導き手······その導きを辿り、彼の地へ到らん! センド・デスティネイション!」
ミレイ達五人は、煌めきの渦に包まれていく。
「師匠の横暴~なのですぅ~!」
リアの叫びが響き渡る中、煌めきに呑まれるように、五人は消えていった。
「ここは······?」
ミレイは周りを見る。ここは、狭い室内で木造りで出来ていた。部屋の外が見れる窓も付いている。
状況が良く呑み込めない中、ヴェルストは背後を振り向き、腰のダガーナイフを抜き放つ。
「誰だ! 出てきやがれ!」
ミレイやシング、リア、アイリスも背後を振り返った。
「ほぉ? 良くワタシの気配に気が付いたな?」
突如、他に誰もいないのに、声が響いたのだった。
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