神聖具と厄災の力を持つ怪物

志野 夕刻

五十一





 「一体、なんな訳!?」
 ミレイはその白い鳥を睨み付ける。
 「あれは、恐らく使い魔で間違いないでしょう······」
 アイリスはそう説明した。
 「使い魔? だったら、どっかの魔法使いの仕業って訳ね」
 「あの~······」ミレイに何か言いたそうに、リアは口を開いた。
 「リア、下がってなさい! 危ないわよ!」
 だが、ミレイは気付かない。

 「あの~ミライさん~······」

 程無くして、場の緊張感を破る声が、突如響く。
 「久し振りですね。シング殿にミレイ嬢······リアは相変わらずといった所ですか。それに珍しい者がいたものですね······ヴェルスト・ハーディ」
 どうやら声は、白い鳥から響いているみたいだ。
 「そうだが······誰だ、てめぇは?」
 ヴェルストは、鋭い眼光で睨む。
 「覚えていないですか? 何年も前ですが少しだけ、王宮内で面識があったのですが。レナード・J・グリウォンという者です」

 「レナードだぁ? 知らねぇな······」
 「そうですか······」
 そこで暫し、間が空く。

 「やっぱり、師匠だったのです!」
 突然、リアは声を上げた。
 「リアは本当に相変わらずですね」
 「師匠、聞いてください! 二体目のディザスターを倒したのですよ!」
 リアは腰に手を付いて、何処か自慢気だ。
 「リア、その報告は要りませんよ。この使い魔を通して見ていましたから。それより······挨拶が遅れて申し訳ありません。教皇ニコラス様、聖女様······」

 「お気になさらないで下さい」
 「儂は構わんよ。それより······この様にコンタクトを取ってきたのじゃから、何かあるのではないか?」
 教皇ニコラスは白い顎髭を撫でている。
 「······我が国の······神聖具······救済の杯が盗まれてしまいました······」
 レナードから告げられた事実に、一同は驚きの表情を浮かべた。
 「急ではありますが、今すぐにシング殿達には戻ってきてほしいのです」
 「でも、レナードさん。僕達は今、神聖グラシア国にいて······」
 シングのその言葉に、即、返答するレナード。
 「それも分かっていてです。大丈夫、準備は出来ていますから」

 何の準備だろうと一同は疑問に思う。だがリアが、手の平にぽんっと拳を打ち付ける。
 「分かったのです! 皆、荷物を取ってくるのですよ!」
 リアはそう言うが、やっぱり疑問に思うミレイ、シング、ヴェルストであった。
 「良いから取りに行ってくるのです~!」
 リアはそう言うと足早に退室していく。他の者達も、自室に向かうのだった。



 それから。

 再び集まった四人は、神聖具の武器や装備品等を身に付けていた。
 「こっちの準備は大丈夫よ。一体、何が始まる訳?」
 ミレイは、手の甲を腰において訊ねた。
 「それでは······この使い魔の周りに集まってくれますか?」
 その時、これから起こる事を察した聖女ソフィーが声を上げる。
 「ちょっと、お待ち下さい!」
 「これは聖女様······どうされましたか?」
 「司教アイリスも······良いでしょうか?」
 「勿論で御座います」
 レナードの了解を得た聖女ソフィーは、アイリスに近付く。

 「アイリス、これを······」
 聖女ソフィーは両手で、アイリスの手を握って何かを渡す。
 「これは······!」
 アイリスは手を開き、僅かに驚いた。
 何故なら、返したはずの神聖具、神罰の十字架があったからだ。
 「アイリス······この神聖具はあなたに必要です。······無事に帰ってくるのですよ」
 その言葉を聞いて、アイリスは微笑む。
 「はい、聖女様······必ず帰ってきます」言葉こそ丁寧だが、何処か仲の良い身内への接し方だった。

 アイリスは、カッカッと確かな足取りで、ミレイ達に近付くとその輪の中へ加わる。
 「始めて頂けますか?」
 「承りました。それでは始めましょう」
 レナードの呼吸を整える音がする。程無くして。

 「の者らを呼ぶ光の舞······」
 詠唱が使い魔ごしに始まった。すると、ミレイ達を包むように光がゆらゆらと踊る。
 「光の舞は、架け橋となりて······我の元へと召還せん······コール・リターン」

 魔法名まで言葉にすると、輝きは最高潮に達し、ミレイ達は腕で目を覆う。
 次の瞬間五人の姿は、その場から消えていた。


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