神聖具と厄災の力を持つ怪物

志野 夕刻

四十五





 その時、衝撃音が響いた。見れば竜巻の槍の側面から、巨大な光が衝突している。
 「私を忘れて頂いては困ります!」
 アイリスは、神罰の十字架を握る手に力を込めた。
 巨大な光は、竜巻の槍を押していき軌道を反らす。
 すると、曲線を描いていって上空へ消えていく。

 「大事はないでしょうか!?」
 アイリスの問いに、ヴェルストは舌打ちをしてから答える。
 「ああ、問題ねぇが······オレに当たったらどうするつもりだ!?」
 「咄嗟だったものでして······その時はその時です」
 アイリスは笑顔で返す。

 「喋ってる場合じゃないわよ!」
 ミレイは、キマイラの前肢の中間へ跳躍していた。足が着くと、すかさず又跳ぶ。
 キマイラの肩に着地すると、首元を狙おうと走り出した。
 しかし、キマイラは身体を揺さぶって落とそうとする。
 その揺れに、ミレイは手をついて堪えていく。
 「暴れるんじゃないわよ!」

 空中にいたヴェルストはその隙をついて、魔法名を叫ぶ。
 「ウィンド・ブレイド!」
 すると神聖具、光魔の指輪が仄かに光り、次に左手に持つダガーナイフに風が纏われていく。
 風はすぐに勢いを増していき巨大な一振りの剣状の暴風へなっていた。
 ヴェルストは空中から、下にいるキマイラに向かって滑空していく。
 その行動に気付いたキマイラは、蛇の尻尾を上へ振って、吸収していた槍や剣を飛ばした。

 ヴェルストは右へ左へ避けながら、更に滑空していく。
 攻撃できる範囲に近付きそうになった時、暴風の巨剣を纏ったダガーナイフで薙ぎ払おうとする。
 「喰らいやがれ!」

 するとミレイは叫ぶ。
 「ちょっと待ちなさいよ! あたしがいるのよ!?」
 「だったら、さっさと退きやがれ、牛女!」
 ミレイは苛つきながらも、即座にキマイラの胴体から飛び降りる。

 向かってくるヴェルストに対して、キマイラは切り返すように、蛇の尾を振るって剣や槍を放とうとしている。
 ヴェルストは滑空しつつ、暴風の巨剣で薙ぎ払おうと腕を動かしていく。
 どちらの攻撃が命中するのが先か······?

 次の瞬間、キマイラの蛇の尻尾が宙に舞っていた。ヴェルストの薙ぎ払いによって、切断されたらしい。
 彼が地面に着地すると、その尻尾も音を立てて落ちた。
 キマイラは尻尾を切断された為倒れ込んでいた。
 ヴェルストは振り返る。
 「あのガキが言ってた通り、この指輪を通して魔法を発動すれば、ディザスターの再生能力を無視できるみてぇだな······」
 ヴェルストはミレイに向かって叫ぶ。
 「おい、牛女!」

 「分かってるわよ!」
 ミレイは、断罪の大斧を下段に構えたまま、動かないでいた。
 良く見れば、その大斧の刃部分が輝いている。次第に、光が強くなっていく。
 まだミレイが、動きを見せないでいると、キマイラの方が先に身体を起こした。
 ミレイは、急いで断罪の大斧を振り上げる。
 すると、曲線を描きつつ光の斬撃が放たれ向かっていく。
 その斬撃は、少しばかり大きなものだった。

 キマイラの方は素早く、反対側へ曲線を描きながら斬撃をかわして、ミレイへ駆けていく。
 「なっ!?」
 ミレイは、突然素早い動きを見せたキマイラに驚きを隠せない。
 更に彼女は、光の斬撃を放った動きにより、隙が出来てしまっていた。
 キマイラの巨大な体躯が迫ってくる。


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