神聖具と厄災の力を持つ怪物
四十
「まだ、まだよ!」
ミレイは、ホーリー・ウォールの無い相手側面に、回り込もうと駆け出す。
だが、アイリスはそうさせない。
「我が敵に聖なる衝撃を加えよ、ホーリー・ショット!」
幾つもの光球がミレイに当たっていく。
それでも、ミレイは立ち上がり又、走り出す。
アイリスも又、詠唱をし聖法術の名称を叫ぶ。「ホーリー・ショット!」
再び、複数の光球が向かってくる。
ミレイは、頭部を両腕で庇いながら、なおも駆けていく。が腹部に幾つか命中した。「うっ!」
その衝撃で膝をついてしまう。
アイリスは、うんざりしたように溜め息をつく。
「いい加減、諦めたらどうですか?」
「何言ってるのよ? まだよ!」
ミレイは、側面に回り込もうと駆け出す。
アイリスも詠唱をし、幾つものホーリー・ショットを放つ。
ミレイは、ホーリー・ショットを幾つか回避しながら、向かっていく。が、やはり残りが一斉に命中し、衝撃で後ろに飛ばされた。
「くっ!」
地面に倒れたミレイは、手をついてすぐに立ち上がる。
「まだよ!」
「······どうして、そこまでするんですか? 貴方には得がないのに······」
アイリスの問い掛けに、ミレイは答える。
「決まってるじゃない。シェインの覚悟に共感したからよ!」
「もし、神聖具を創って、シェイン様が命を落としてもですか? それでも同じ事が言えますか?」
アイリスがそう質問した所で、シェインが声を上げる。
「もう、いいよ! ミレイの姉ちゃん······」
「何がいいっていうのよ?」
「僕が我慢すればいいんだ······」
「シェイン! あんたが諦めてどうすんのよ! さっき言った覚悟は、気持ちは、簡単に抑えられるものだっていうの!?」
ミレイの問いに、シェインは唇を噛み締めて、押し黙った。
「あたしは諦めないわよ! 何度だって、やってやるわ!」
「もういいでしょう······そろそろ終わりにします」
アイリスは聖法術の詠唱を口にしていく。
「我が敵に聖なる衝撃を加えよ······」
すると、先程より多い無数の光球が展開される。
「上等じゃない······」
ミレイは全速力で駆け出す。
「ホーリー・ショット!」
アイリスがそう叫ぶ共に、光球が時間差で放たれていく。
光球がくる頃合いを見て、突然ミレイは、走る軌道を周囲の人だかりに変えた。
「何を!?」
アイリスは、口を開いて驚いた。
次にミレイは、力強く大地を踏み、木に向かって跳躍する。
更に、樹木の側面に一瞬足をつけると、ありったけの力でアイリスの上空へ跳んだ。
落下しながらミレイは、右足を高く上げる。
アイリスは避けようと、横に動いていく。
次の瞬間、ミレイの踵落としが地面を砕いた。草や土、石が、宙に舞う。
舞った破片が落ちた時。「終わりです」アイリスは、金属製の杖を振るう。
咄嗟にミレイは、潜り抜けるように転がってかわした。
「あんたが、ね」ミレイは、体を起こしつつ、相手の腹部へ掌底をかまそうとする。
アイリスは避けようとするが、すぐさま迫っていき、斜め下からの掌底打ちが決まった。
「そんな······!」
アイリスは、か細くそう呟くと、倒れていった。
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