神聖具と厄災の力を持つ怪物

志野 夕刻

三十八





 神道兵三人がシェインに近付いていく。
 「シェイン様、申し訳ありません! 命令ですので!」
 神道兵三人はシェインを捕まえると、連れていこうと歩きだした。
 聖女ソフィーもそれに伴って、きびすを返し、歩みだす。

 「ちょっと待ちなさいよ!」
 聖女ソフィーと神道兵達を呼び止める声は、意外にもミレイだった。
 「ミレイ、何か用ですか?」
 聖女ソフィーは、振り向き問う。
 「大有りよ! 無理矢理連れてくなんて、どうかと思うわ。それに、シェインの覚悟は聞いたでしょ?」
 「止めるなら只じゃ済まないですよ。ミレイといえども······」
 聖女ソフィーは、冷えきった視線でミレイを睨む。

 すると、アイリスが会話に割り込んだ。
 「ちょっと、お待ち下さい。ミレイさんは、シェイン様が神聖具を創るのに反対だったはずでは······?」
 「気が変わったわ。シェインの覚悟を聞いたらね」
 ミレイは、アイリスにそう答えると、次は聖女ソフィーを指差し、言葉を発する。
 「言っとくけど、聖女様が相手だろうと譲る気は無いわ」

 ふと、「くくくっ」と笑い声が聞こえる。ヴェルストだ。
 「なら、一対一の決闘で決めたらいいじゃねぇか」
 その言葉に、誰もが驚きの表情を見せる。
 「そんなの駄目に決まってます! 決闘だなんて!」
 アイリスは声を荒げた。
 「良いですよ。決闘で決めましょう」
 聖女ソフィーは、落ち着いた声でそう言い、頑な表情をしている。
 「ただし、条件があります」
 「条件? 良いわよ」
 「私は治癒する術しか使えないので、代理の人に闘ってもらいます。それともう一つ、ミレイはその大斧ではなく、こちらで用意した武器を使って下さい。あくまで、決闘なのですから」
 「それで良いわ」

 「聖女様とミライさん、何か忘れてないのですか? キマイラはその間どうするのです? 放置はまずいのですよ······」
 リアは、焦った表情をして問う。
 「それなら、問題無いですよ」
 聖女ソフィーは、落ち着いた様子でそう返した。次に、シングを見据える。
 「シング、お願い出来ますか?」
 シングは、はっと気付く。
 「僕ですか?」
 「はい、神道兵と神官達も行かせますので」
 「······分かりました。でも、アイリスさんは?」

 聖女ソフィーは、シングの言葉にアイリスを一瞥する。
 「アイリスには、私の決闘の代理をしてもらうので······。その間、酷かと思いますが、ディザスターの足止めお願いしますね」
 「はい」



 少し時が経ち、シングと一部の神道兵、神官達は、キマイラの元へ向かって行った。
 ミレイとアイリスは、開けた場所で距離を取って向かい合っている。
 二人の周囲には聖女ソフィーと神道兵に捕まったままの弟のシェイン、王国指揮官がいた。
 野次馬の、神道兵や神官達も集まっているが。

 ミレイの手には、木の剣が握られていた。恐らく、聖女ソフィーが用意させた代わりの武器だろう。
 対してアイリスは、いつも通りの術を使うための金属製の杖。
 しかも、神聖具、神罰の十字架は身に付けていない。

 ミレイは、余裕な表情で相手を見据えている。
 アイリスはというと、落ち着いた様子で佇んでいた。

 程無くして、聖女ソフィーの声が響き渡る。
 「始める前に確認したい事があります。アイリスが勝ったら、シェインは連れ帰りますが良いですね?」
 「良いわ。只、あたしが勝ったらシェインの意思を尊重して貰うわよ」

 「それで問題無いですよ。それでは、そろそろ······」
 聖女ソフィーは、そう間をためると、続きの言葉を発する。
 「始めて下さい!」


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