神聖具と厄災の力を持つ怪物
三十七
シェインの神聖具を創るという言葉に、その場の空気が変わる。
「それだけはいけません、シェイン様!」
アイリスは真っ先にそう言葉を返した。
続いて王国指揮官も反対する。
リアも同様の意見で、「リアもそれはどうかと思うのです······」と言葉にした。
「別に神聖具を創らせても良いんじゃねぇか? そいつ自身が決めたんだからな」ヴェルストは、賛成のようだ。
ミレイはミレイで、先程から複雑な表情をしていた。
が、やっとの事で発言する。
「あたしは、シェインの好きにさせてあげたいけど······やっぱり、姉の聖女様の手前、賛成出来ないわね」
治療の終わったシングは、この話になってからもずっと黙りで、何かを考えているようだった。
シェインは、意を決した表情で発言する。
「みんなが反対しようと、ボクの意思は変わらないよ」
そこで突然、一人の神道兵が来て、声を上げる。
「ご報告します! 聖女様が到着しました!」
続けて三人の神道兵に伴われて、聖女ソフィーが姿を現した。
「戦いの最中、突然来て申し訳ありません」
聖女の言葉に、司教アイリスと王国指揮官は言葉を発する。
「いえ、その様な事は······ただ聖女様、この様な危険な所に来るなんて······」そう身を案じるのは、アイリス。
「聖女様自ら来るとは、何か用があると思いましたが、やはりシェイン様を連れ戻しに······?」
そう問い返すは王国指揮官。
「はい、シェインを連れ戻しに来ました。さあシェイン、帰りますよ」
聖女ソフィーはそう言いつつ、シェインに近付くと手を差し伸べる。
「ソフィー姉ちゃん、ボクは戻らないよ。ボクだって、みんなの役に立ちたいんだ······」
シェインは、頑に拒む。
「お願いだから、私の言う事を聞いて、ね? 何度も言うけれど、あなたは体が弱いのです。だから、神聖具を創ろうとすると、苦しくなってしまって無理なの······だから······」
聖女ソフィーは、説得しようとするが弟のシェインは、その言葉を遮る。
「もういいよ······」
「お願いだから······」
「もういいから······!」
シェインは声を荒げた。すると、聖女ソフィーは黙る。
間を一瞬置いて、再びシェインは喋り出した。
「知ってるんだよ······。ボクの体は、病に侵されてるって······」
その言葉に、聖女ソフィーは口元を手で押さえ、驚いた表情をする。
「自分の体のことだから、良く分かるんだ······長く生きられないって······」
シェインのそう言う表情は、決して悲観的ではなく、覚悟の決まっているものだった。
「それが分かっていて私を······お姉ちゃんを置いてくなんて言うの?」
聖女ソフィーは悲しそうに、又、寂しそうな表情を見せた。
「うん、ソフィー姉ちゃんには悪いけど······かつての救世主の様に、神聖具を創るのがボクのやりたい事なんだ」
シェインのその言葉に、聖女ソフィーは「気持ちは変わらないのね······」と呟く。
「仕方ありませんね······神道兵の皆さん、シェインを捕まえて下さい!」
聖女ソフィーは、神道兵達にそう命令した。
「大人しく帰る気がないなら、無理矢理にでも連れ帰りますからね!」
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