神聖具と厄災の力を持つ怪物

志野 夕刻

三十四





 ミレイとシング、ヴェルストが距離を詰める前に、キマイラは動きを見せる。
 神道兵や王国兵、数名を喰らったのだ。
 喰らうと、キマイラに変化が現れる。
 先程、神罰の十字架の光で貫かれた箇所が修復していく。
 「そんな······! 神聖具の攻撃でも再生するなんて······」
 アイリスは僅かに驚いた表情をした。

 修復が終わったキマイラは、すぐさま、距離を詰めてくるミレイ達の方に振り向く。
 「おせぇぞ、化物が!」
 最後に駆け始めたヴェルストは、誰より速く距離を詰めていた。
 彼は擦れ違い様、風を纏ったダガーナイフで、キマイラの左前脚を切り付ける。
 だが、神聖具でない武器なので、傷が再生していく。
 ヴェルストは舌打ちをする。
 「これがディザスターの再生能力って奴か······厄介じゃねぇか」

 「ヴェルスト! あんた、連携ってものを考えなさいよね!」
 ミレイはそう言いつつ、キマイラの右前脚に大斧の水平切りをかます。
 すると、一瞬バランスを崩すキマイラ。
 「今よ!」
 ミレイの声に応えるように、シングは喉元目掛け跳躍していた。
 同時に、鋭光の槍の穂先に、光子状の刺を真っ直ぐ生やす。
 次に、喉元に狙いを定め、その鋭光の槍で薙ぎ払う。

 キマイラは短く吼えた。
 シングは着地し、仰ぎ見る。が、傷は浅かったようで、キマイラはまだ生きていた。
 キマイラが行動に移る。
 シングを左前脚で踏み潰そうと動いたのだ。
 シングは、槍を両手で持ち、柄の部分で受け止める。
 「くっ!」
 キマイラの踏み潰しに耐えようとするが、どんどん押されていく。
 しまいには、地に片膝を突いてしまった。

 シングは諦めかける。そんな時、ミレイが加わりキマイラの左前脚を押していった。
 「あんたは、あたしが支えるんだから······!」
 だが、ミレイでも厳しいようで、それ以上押し返せないでいる。
 「神罰の光よ!」
 アイリスの声が響き、上空からキマイラの胴体へ幾つかの光が降り注ぐ。
 その光は胴体を貫くと、一瞬だけキマイラの左前脚の力が抜ける。

 ミレイはその機会を逃さず、渾身の力を両腕に込めて押し返した。
 キマイラはよろめく。が、すぐに体勢を整える。
 次に突如、キマイラは駆け出した。
 後方にいるアイリスとリアに向かって。
 咄嗟に、ミレイとヴェルストは追い掛ける。間に合いそうにないが。
 「は縛りし力······汝を縛りてとどめよ!」
 そう響く声はリア。彼女は落ち着きながら、詠唱を終える。
 同時に、キマイラの牙がリアとアイリスに迫る。
 「スタン! なのです!」
 リアはしめに、そう叫んだ。
 すると、二人を喰らう直前のキマイラは動きが止まる。

 リアは焦った様子で声を上げていく。
 「ミライさん、ディザスター相手だと十数秒しか持ちません! それとリアも動けないのです!」
 「そんな事言われても······。仕方ないわね。ヴェルスト、あんたに任せたわ!」
 ヴェルストは舌打ちをすると、「何でオレが······」と不満を言う。
 続けて、「てめぇがやれ、牛女······」と呟いた。
 ミレイは、聞こえたようで「ヴェルスト、何か言った?」と問う。

 「何でもねぇ······」
 ヴェルストはそう返すと、跳躍してキマイラの背に乗る。
 次に素早く駆けていく。
 背の中程を過ぎた所で、又跳ぶとリアとキマイラの間に、割り込むように着地した。
 ヴェルストはすぐさま振り返り、魔法を発動しようとする。
 「トルネード・ランス」
 その言葉と共に、右手のダガーナイフに、纏った風が渦巻いていく。
 ヴェルストは、半身になり右腕を引く。

 「ヴェルスト、早くしてなのです~! そろそろ······!」
 リアはかなり、焦っている。
 ヴェルストは舌打ちをすると、右手のダガーナイフの渦巻く風が巨大になるのを待つ。
 「そろそろなのですよ~! ヴェルスト、早く······!」
 「『なのです』、『なのです』、うっせぇぞ」
 渦巻く風はかなり大きくなっていた。
 それとキマイラの身体が、リアの魔法に抗うように、僅かに動いている。
 「ヴェルスト~、もうダメなのです~! もう、もう······!」

 魔法が解ける時がやってきた。
 キマイラは動き出し、獰猛な牙でヴェルストとリアを喰らおうとする。
 「もう、終わりなのです~!」
 リアは慌てふためく。
 「喰らいやがれ、化物が!」
 ヴェルストはそう声を上げ、ダガーナイフに纏った竜巻の槍を押し出していく。
 「リベレイション!」
 その言葉と共に竜巻の槍が放たれ、斜め上へとキマイラの顔面、胴体を貫いていった。

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