神聖具と厄災の力を持つ怪物

志野 夕刻

 ミレイとシングは、集団の中にいる。
 周囲には、様々な鎧と武器を身に付けた戦士や、ローブを纏い杖を持っている魔法使いらしき者達がいた。
 中には、神官服を着た者達もいる。


 前方辺りには、同じ鎧に武器で身を固めた者達と、白を基調としたローブを身に付けている魔法使い達。
 各々おのおのが、緊張した面持ちで出発を待っていると、前方の中でも先頭にいる指揮官らしき男が声を発する。


 「それでは、再び出発をするが言いたいことがある! 災厄の怪物ディザスターを足止めするため、我ら王国軍と共に戦う冒険者がいること、嬉しく思う! これより先は、森の奥深くになる! 他の怪物も出るため、警戒を深めるように!」

 指揮官は一瞬、間をためてから言葉を続ける。「これより、再出発する!」

 指揮官が歩き出すと、続けて皆も進んでいく。ミレイとシングも付いていくが、歩きながら、声を抑えて話し出す。
 「それにしても、あんた。ほんと、お人好しよね。ディザスターの足止めに志願するなんて······」
 ミレイはあきれ顔を見せる。
 「そうかな? 災厄の怪物ディザスターが復活して、困っている人達を放って置けないだけだよ」
 シングの真剣な表情に、ミレイは頬を赤らめる。

 「······それはそうと、あんた、まさかディザスターとの戦いにあれを使うつもりじゃないわよね? あれを使ったら、あたし達のことがばれかねないわよ」
 「大丈夫、あれは使わないつもりさ。ミレイは心配しすぎだよ」
 「まあ、それなら良いのよ」
 ミレイの言葉を最後に、二人は無言になった。

 ミレイとシングを含めた集団は、木の枝等を掻き分けていき、進んでいく。

 途中で突然、先頭の王国軍兵士達の足が止まる。ミレイとシングは、疑問に思う。


 だが、すぐに答えが分かった。

 「ディザスター、ミノタウロスを発見!」指揮官が叫んだからだ。
 ミレイとシングはその言葉を聞いて、災厄の怪物が見えるところまで進む。
 すると、一体の、二足で立つ牛頭の怪物がいた。
 身の丈は五メートル程あり、右手には大斧を持っている。

 「これより、攻撃行動に移る! 近接で戦える者は前へ、魔法使いや神官は後方で支援を!」
 指揮官の声掛けで、ミレイとシングを含む剣士や戦士達が前へ進み出る。

 「魔法使い達は攻撃魔法の詠唱を!」
 魔法使い達は、杖を構えて詠唱を始めていく。
 「前衛は、左右に散開! 取り囲むように進め!」
 ミレイとシングは、他の前衛と一緒に怪物の右側へ弧を描くように駆けていく。


 前衛が、ミノタウロスとの距離を半ばまで詰めた時、魔法使い達の詠唱が終った。「よし、魔法を放て!」
  指揮官は、剣を抜き放ち前へ向けて、言い放った。その合図で一斉に、様々な攻撃魔法がミノタウロスへ飛び交っていく。
 魔法は命中し、指揮官が続けて指示を出す。「前衛、すかさず斬り込め!」

 前衛の戦士や剣士達は、距離を詰め終え、次々に斬りかかっていく。
 ミノタウロスは魔法が命中したことで、咆哮を上げる。
 「うるさいぜ!」
 一人のがたいが大きい男は、斧でミノタウロスの左腕を切り落とす。
 「口ほどにもないな」

 がたいが大きい男は、調子に乗って、続けざまに切りかかろうとする。
 だが、ミノタウロスの左腕・・でぶっ飛ばされていく。「ぐおっ!」

 「あれが、ディザスターの再生能力か······」シングは、瞬時に再生したミノタウロスの左腕を見せられ、息を呑んだ。

 「ミレイ、無茶はしないでくれよ」

 「分かってるわよ。いつも通りにやるだけよ」

 「それならいいんだ。じゃあ、行くよ!」


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