神聖具と厄災の力を持つ怪物
序章
紅い炎が、そこらの建物内の通路を踊りくるうかの様に燃やしている。
その紅い炎と似た赤い髪の少女は、炎の起こす煙にむせながら、右手で口と鼻を覆っていた。
たどたどしい足取りで通路を進んでいく。すると、複数の足音が激しく迫って来る。
「いたぞ!」
鎧を身に付けた一人目の屈強な男が、眼前の赤髪の少女を発見すると叫んだ。
男は腰の鞘から剣を抜き放ち、斬ろうとする。
「おい、待てよ! よく見りゃこの娘、中々可愛いじゃねえか。ここは俺らで楽しまねえか?」
二人目の若い男がそう言って止めると、屈強な男は「······それもそうだな」と同意する。
「おれも賛~成」
三人目の軽薄そうな男もそう言うと、屈強な男が赤髪の少女の腕を掴んで引っ張る。「おら、こっちに来い!」
「いや、やめて! あんた達何する気!? あたしが誰だか分かってるの!?」
赤髪の少女は声を荒げながら、男の手を振りほどこうとする。
「分かんないな。ここはもう戦場だ! 戦場である以上、身分が関係あるか!」屈強な男はそう言った後、高らかに笑った。
「いや、離して!」
赤髪の少女は諦めずに抵抗していくが、男の力には抗えないのだろう。
次の瞬間には、男の肩に担がれていた。
「下ろして! 下ろしなさいよ!」
少女はそれでも抵抗を続ける。
「暴れんな! ったく、めんどくせえ」屈強な男は構わず、担いだまま歩いていく。
「ハハハッ! 抵抗したって無駄だぜ。これからお前は俺らの慰み者になるんだ。誰も助けになんて来ねえよ!」若い男は下卑た笑いを上げ、そう言った。
「そうそう!」軽薄そうな男もにやにやと笑う。
赤髪の少女は、「そんなことないわ! 絶対助けに来てくれるんだから!」と言うと、目を閉じ唇にぎゅっと力をいれて願う。
(絶対あいつが来てくれるんだから······! あの時みたいに······)
「勝手に言ってろ。さて······」男達の足取りが止まった。気づけば屈強な男の手によって、建物の外に出ていた。
男は少女を下ろすと、スカート部分の布を引きちぎり、逃げれないよう両腕と両足を縛っていく。
「そろそろお待ちかねだぜぇ」
若い男は少女に近付き、胸元の服を縦に引きちぎる。
「いや! ······あんた達、こんなことして只じゃ済まさないんだから!」
赤髪の少女は、男達を強く睨み付ける。
「こいつ、こんな状況でも良くそんな事言えんな。······気の強い女はきらいじゃねえ。なあ、俺からでもいいか?」
若い男は、後ろにいる二人の男に聞く。
「先に良いぞ」「別におれもそれで」
屈強な男と軽薄そうな男は、揃って譲る。
「という訳だ。それじゃ、楽しもうぜぇ」若い男は跨がり、顔を少女の顔に近付けていく。
「いやっ······」赤髪の少女は、抵抗を諦め目を強張らせるように閉じた。
(······もう、駄目なの?)
突如、少女と男達に近付く足音が響く。音は大きくなっていき、間近まで迫った時。少年の必死さを感じさせる声がした。
「ミレイ!」
赤髪の少女にとって、気力を取り戻させてくれる、安心させてくれる声だった。
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