魔王から領主にジョブチェンジ!? ~ダンジョンから始める領地経営~

一条おかゆ

第18話 勇者、王に呼び出される

 
 キマドリウスが領主となって2週間。
 一方その頃、彼と戦った勇者達は――

「こんにちは、王様」

「うひひっ、こんちわ」

 玉座に座る王に謁見していた。

 しかし、人数は二人。
 剣を持った赤い短髪の少女と、杖を持った紫の長髪の少女しかいない。

「そういえばテルはいなんですか?」

 剣を持った少女は王に尋ねた。

 彼女が聞いてるのは、おそらく弓を持った少年の事だろう。
 何故かこの場には、彼だけ呼ばれていないからだ。

「テルに用はない。わしが呼んだのはお前らだけだ」

 白いひげを蓄えた老人――王はきっぱりとそう答えた。

「ふーん、じゃあ……昇進とかかな?」

「最&高だね、ひひっ」

「まぁ私達魔王倒したし、当然よね」

「当然、当然」

 二人で勝手に進む話。
 だが現実は残酷だ。

「んな訳ないだろ。お前らよりテルの方が10000倍使えるわい」

「またまたぁ~そんな事言っても~?」

「マジだよ」

「急にフランク!?」

 王に対して大げさに驚く剣の勇者。

「はぁ……本当に呼ばれた理由がわからんのか?」

「わからないですね」

「どーでもいい」

 二人の勇者に様子に、王は頭を抱える。

「まぁいい……じゃあ用件を伝えるぞ」

「はい」
「ふひっ」

 王は椅子に正しく座りなおす。
 そして威厳を醸し出し、重々しく口を開いた。

「剣の勇者、杖の勇者よ。お前らは――クビだ」

「はあああぁぁぁ!!?」

 突然の宣告に、剣の勇者の叫び声が轟く。

「何で!? 何でなんですか王様!! 私達、魔王倒した勇者ですよ!! 我、勇者ぞ!!」

「いや、理由わかんないの?」

「わかんないですよ!」

「はぁ……」

 王は深くため息をついた。

「じゃあ、一から理由を説明してやる」

 そう言うなり、王は手元にあった冊子を持ち、その表紙をめくった。

「まず剣の勇者。お前はたび重なる器物破損容疑だ」

「そんな事しましたっけ……?」

 とぼけているのか、本当にわからないのか、剣の勇者は人差し指をあごに当てて首をかしげる。
 だが、王はそんな剣の勇者の態度を気にも留めない。

「その1。王城から出る際に、道が分からないという理由で壁をぶち壊した。その2。教会に現れたリッチを倒すために、教会そのものを破壊した。その3。下水道……」

「も、もういいです! わかりましたからっ!」

「その101まであるんだがな」

「多いっ!!」

「言いたい事はまだまだ沢山あるが……分かったようならいいだろう」

 王は冊子のページを一気にめくり、次の項目へと移動する。

「じゃあ次は杖の勇者。お前は傷害罪と殺人未遂と薬……」

「ま、待て!」

「どうした?」

「それ以上言えば、この作品がR15指定になる。それは駄目だ」

「は? 何の事なんだ……? ……まぁいい、これで解雇された理由が分かっただろ」

 明らかに非があるのは勇者達。
 クビも当然だ。

「ぐぬぬ……世界を救った勇者に対してこんな仕打ちなんて……」

「逮捕されないだけマシと思えよ」

 通常なら一発アウトの逮捕事案。
 だがそこは勇者という肩書と、王の恩情で見逃してもらえていたのだろう。

 しかし魔王亡き今。
 ついに今までやって来た事が身に降りかかったのだ、解雇という形で。

「それじゃ、これで話は終わりだ。もう王城には来るなよ、あと犯罪も犯すなよ」

「……はい」

「へへっ、わかった」

 解雇されてしょんぼりしている剣の勇者。
 いやらしい薄ら笑いを浮かべる杖の勇者。
 どちらも魔王を倒した正真正銘の英雄だ。

 だが、そんな二人の勇者は今日『無職』にジョブチェンジした。

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