魔王から領主にジョブチェンジ!? ~ダンジョンから始める領地経営~

一条おかゆ

第15話 領主、冒険者三人組に煽られる


「領主様! 来てもらってええかの!」

 ダンジョンの受付を任せた老人の一人が、慌てて入って来た。

「どうしたんだ」

「それが……冒険者達が怒ってるんでさぁ。助けてくだせぇ!」

「分かった、すぐに行く」

 老人の訴えを聞くなり、キマドリウスはすぐに席を立ちあがった。

「俺も行くぜ」

「わしも行くぞ」

 それに呼応するかのようにマッキーとゾレムも立ち上がった。
 そして彼等は宿屋の扉を開いた。

 宿屋とダンジョンは目と鼻の先だ。
 なので扉を開いただけでも、その問題の冒険者とやらが目に映る。

「タダで入れさせてくれよ」

「こ、困ります」

「いいじゃねぇか、それくらい」

 三人の冒険者が受付の老人たちに迫っている。
 おそらく入場料である銅貨一枚を出し渋っているのだろう。

 流石にそれを設けた本人が許すはずもない。
 キマドリウス達は当然彼らに話しかけた。

「おい、お前たち。何をしているんだ?」

「あ? 何だてめーはよー」

「俺はここの領主だ」

「お、領主か。ちょうど良かったぜ、俺たちゃダンジョンで金取るのは違法じゃねーのかって文句言ってんだよ」

「……そうなのか?」

 キマドリウスは人間の事情をそれほど詳しく知らない。
 だから、ついぽかんとしてしまう。

「いやいや、ダンジョンから金を取ってはいけないなんて法は無いぞ、領主様……」

「なっ!? あいつらはこの俺を騙したのか!?」

「いやいや、これくらい常識だぜ……」

「常識……あぁそうだ! そーいえばそーだったなー!!」

 目が泳ぎ、言葉も棒読みに近い。
 あまりにも白々しすぎる。

「まぁ別に領主様がどんな奴でも俺は気にしないけど、あいつらは違うみたいだぜ」

「俺達が法だーー!!」

「そのまま騙されとけ間抜け領主!」

「ばーか、ばーか!!」

 マッキーが目をやる先では、三人の冒険者が騙されたキマドリウスを心底馬鹿にしていた。
 しかもかなり低レベルだ。

「ぐっ! 幼稚園児レベルの罵倒をしてきやがって……」

「お前みたいなおつむで領主が勤まるかよーだ!」

「ばか領主ー!」

 目の下を引っ張ったり、尻を出して叩いたり、彼らの煽りレベルは低い。
 だが、いやだからこそキマドリウスの心にふつふつと怒りが湧いてくる。

「……一度、馬鹿にするのはやめてくれないか」

「うぇーい、やめる訳ねぇだろあんぽんたん!」

「ドMのド変態ー!!」

 こうまで言われたら、キマドリウスも黙っておけない。
 そして、

「俺はドMでもド変態でもないーーー!!!」

 ついにキレた。

「わはは、キレてやんのー」

「やんのー!」

「はぁはぁ……お前達に思い知らせてやる。この俺を怒らせた事の重大さをな」

「息が荒い! 興奮して――」

「『永劫の檻、神銀の格子』」

 冒険者の一人が馬鹿にし終わるよりも早く、キマドリウスは詠唱した。
 それによって、

 ――ガキイィン!!

 と、銀色をした鳥かごのような物が出現し、冒険者達を閉じ込める。

「なんだ、これは!?」

「あの領主、魔術師か!」

 冒険者は始め、戸惑った。
 だが彼らも危険と寝食を共にする冒険者だ。
 すぐに態勢を建て直し、剣を抜いた。

「こんなしょぼい檻程度、この銀の剣で破ってやる! ウオオオオ!!」

 冒険者の一人は果敢に檻に切りかかるが、

 ――キィィン!!

 と無残にも弾かれてしまう。

「くそっ!」

「俺もやってやるぜ!」

 他の二人も剣を抜き、銀の檻を攻撃し始める。
 だが何度もやっても結果は変わらない。

 そして何度も何度も攻撃を行い、開きすぎた差、それを実感する頃には、

「はぁはぁ……」

「もう無理だ……」

 息を切らして座り込んでいた。

「フハハ! その檻はミスリル製だ! 貴様ら如きで破れるはずが無い!」

 その様子に、キマドリウスにダンジョンボスとしての態度がつい出てしまう。
 物凄く楽しそうだ。

「くぅ……」

「では貴様らをこれから、どうしてやろうかなぁ!」

「た、頼む、命だけは!」

 冒険者は命を乞う。
 そこに先程までの傲慢さは無い。

「はぁ……仕方ないな、命だけは助けてやろう」

「ありがとう!」

「だが、死ねば良かったと必ず後悔するような罪滅ぼしをさせてやるからな! フハハハ!!」

「そ、そんなぁ……」

「フハハハハ!!」

 ダンジョン前には領主キマドリウスの高笑いが響き渡った。

 ◆領主生活15日目

 領民:252人
 ダンジョン:5階層

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