魔王から領主にジョブチェンジ!? ~ダンジョンから始める領地経営~

一条おかゆ

第14話 領主、再会する


 翌日。
 キマドリウスは宿屋へ昼食を食べに来ていた。

「はい、こちらが今日のランチ定食になりますね」

「ありがとう」

 キマドリウスは笑顔で店員のホビットから料理を受け取る。

「そういえばキマ様。先程冒険者の方々が来てましたよ」

「何人くらいいたんだ?」

「3人ですね……っと、揚げ物見てきますね!」

 ホビットは頭を下げて去って行った。
 それを見て、キマドリウスと共に食事しに来たドワーフの男――ゾレムが話を切り出した。

「そういえばあの家の内装、作り終わったぞ」

「ほう、もう作り終えたか、仕事が早いな」

「当然だ。なんせ俺はこの周辺で一番の大工だからな、わっはっは!」

 ドワーフは大声を出して笑う。

「だが"あの家"が終わったなら、横の家の内装も頼むぞ、ゾレム」

「分かっとるわい」

 今までダイーオのダンジョン周辺には、この宿と受付の二つしか建物は無かった。
 そして記念すべき三軒目――"あの家"とは集合住宅、アパートの事だ。

 既に移住してきた老人達、そしてこれから移住してくるであろう人々に住処を提供する為、キマドリウスは集合住宅をいつものように地面から生やしていた。
 更にその横にはもう一軒の建物を生やしていて、これは商店として使う予定だ。

「にしても、家をあんなポンポンとタケノコみたいに作るなんて、領主様は何者なんだ?」

「ふっ……ただの領主だよ」

 キマドリウスはドヤ顔で足を組む。
 完全に有頂天だ。

「いや、ただの領主が出来るもんじゃねぇよ」

「そうかそうか!」

「あんたみたいな人が領主になってくれて、俺達も嬉しいぜ」

「フハハ! そう褒めるでな…………ぶほおおおぉぉぉ!!! これ、コーヒーじゃないか!!」

「わっはっは! コーヒー飲めないのか、領主様!」

「笑わないでくれ!!」

 今のキマドリウスには先程の気品の欠片も無い。
 コーヒーを吹き出した事と飲めない事を恥ずかしがっているだけだ。

「わっはっは! 悪いが、笑みがこぼれちまうぜ!」

「くそぉ……!」

 そんな下らない話をしていると、

 ――ガチャ。

 と宿屋の扉が開かれた。

「これからダンジョンに行くんだ。今日のおすすめを頼む」

 入って来たのは一人の冒険者。
 腰に短剣を下げた軽装に、真っ黄色の髪。
 キマドリウスは彼に見覚えがある。

「……マッキーか?」

「あぁそうだが……って領主様!?」

「うおぉ!? 急に大声を出さないでくれ……ってか、何故またこのダンジョンに来たんだ?」

「別に再度攻略しに来てもおかしくないだろ、ここのダンジョンは財宝が多かったんだし」

「……それもそうだな」

 正論を言われて、キマドリウスはしゅんとする。

「……まぁ本当はダンジョンボスに会いに来たんだけどな」

「なっ!? じゃあなんで最初に嘘ついたんだよ!」

「ははは。悪い悪い、こういう冗談を言う癖があるんだよ」

「その癖、今すぐにでも治すべきだな」

「まぁまぁいいじゃねぇか。何となくあんたが良い人そうってのは伝わって来たんだし」

「お前がひねくれてるのも伝わって来たけどな」

「ははは!」

 むっとした表情のキマドリウスと、ころころと笑うマッキー。

「何だか嬉しそうだが……お前、酔ってるのか?」

「違う違う。俺は普通に嬉しいだけだよ、あんたとの再会が」

「なっ!? 何だと!?」

 不意の一撃。
 恥ずかしくなり、キマドリウスの顔が赤くなる。

「あれ? 照れてるかい、領主様?」

「違う! 俺はただ――」

 この先、待っているのは見苦しい言い訳だろう。
 だがそれは最後まで聞けず、

 ――ガチャ!

 と再度開かれる宿屋の扉。
 そして、

「領主様! 来てもらってええかの!」

 ダンジョンの受付を任せた老人の一人が、慌てて入って来た。

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