魔王から領主にジョブチェンジ!? ~ダンジョンから始める領地経営~

一条おかゆ

第12話 領主、商談で即決する

「よし、『ステータス鑑定』!」

 ダイーオのダンジョンでの初戦闘から数日。
 キマドリウスは久し振りにステータス鑑定を自分に使った。

 ――――――――――

【名前】キマドリウス
【種族】悪魔
【現職業】領主LV2
【個人LV】2

【職歴】
 ・魔王軍兵卒LV10 
 ・魔王軍指揮官LV10 
 ・雑貨屋LV2
 ・魔王軍幹部LV10
 ・四天王LV10
 ・魔王LV10

【職業スキル】
 ・『ステータス鑑定』

【個人スキル】
 ・『全属性魔術』
 ・『魔法究極強化』
 ・『魔法鑑定』
 ・『魔導具鑑定』
 ・『軍団指揮』
 ・『形態変化』
 ・『ダンジョンの主』

 ――――――――――

「おぉ! 個人レベルがやっぱり2になってる!」

 実はここ数日。
 彼はダンジョンに、ゴブリン以外のモンスターも召喚できるようになっていた。
 だから彼自身もレベルが上がっているのは実感していた。

 ちなみにその召喚できるようになったモンスターは2種類。

 1種はコボルト。
 ゴブリンの青色バージョンだ。
 多少ゴブリンよりも噛む力が強いが、それ程違いはない。

 もう1種はワーラビット。
 頭に角の生えた白い兎だ。
 可愛いし、もふもふしているが、冒険者の貴重な食糧源になりそうなので、キマドリウスに召喚する気は無い。

 だからあれから、必然的にコボルトを3匹召喚した。
 なので現在ダンジョンにはゴブリンが4匹、コボルトが3匹いる。

「いやーレベルが上がるって楽しいなー!」

 キマドリウスは、目に見える自身の成長を喜んだ。
 やはり具体的な数字として成長が実感できると、嬉しいものだ。

「なんか今なら何でもできそうだぜー!」

 何故か湧き起こる全能感。
 それをキマドリウスは感じていたが、

「まるでブックマークが増えたweb小説作家みたいなこと言いますね」

 いつからか、彼の横にはアオイが立っていた。

「ええええぇぇ!? あ、アオイさん!? い、いつからそこに!?」

「つい先ほどこの書斎に入って来たばかりですよ」

 慌てふためくキマドリウスとは対照的に、アオイは淡々と答える。

「前にも言ったけど、ノックくらいしてよ!!」

「善処します」

「善処か……まぁいいや。で、何の用なの、昼飯にはまだ時間があるけど」

「商人様がいらっしゃいました」

「あぁ、じゃあ会いに行くよ」

 そう言ってキマドリウスは部屋から出た。
 そして、商人が待つであろう屋敷の応接室へと向かった。

「失礼するぞ」

 キマドリウスは扉を開いて、応接室の中を見た。
 すると、そこには1人の商人がソファに座っていた。

 商人はターバンを巻いた色黒の男性。
 この近くでは珍しい人種だ。

「おぉ、あなたが新領主様ですね。私はソーマと申します、以後お見知りおきを」

「キマだ。こちらこそよろしく頼む」

 キマドリウスは商人と握手を交わした。

「で、何用なんだ? ただの商売ならわざわざ領主の屋敷にはこないだろう」

 キマドリウスは話を切り出した。

「隣の領地で、このダイーオのダンジョンの事についてを耳に挟みましてね。……それで、何かと必要なんじゃないかな? と思い来た次第です」

「もっと具体的に話してもらっても良いか?」

「すみません。端的に言えば、ダンジョン近辺で必要な建材や資材を売らせて頂きたい、という事です」

「あぁそういう事か……」

 現在、ダンジョンの近辺にある建物は宿屋が一軒だけだ。
 だがこれからの事も考えれば、それで足りるはずが無い。

 だからもっと建物を作る必要があるのだが、その全てをキマドリウスが作ることは出来ない。
 モンスターの召喚に魔力を使いたいし、何より目立ちたくないからだ。
 だから……

「それならこちらからも頼みたい」

「おぉ、それはよかった!」

 二人は再度、固い握手を交わした。
 これで商談は成立だ。

「……」

「ん? どうしたのだ、ソーマよ」

「トイレの後、手を洗い忘れていました……」

「なっ!? うわああああぁぁぁ!!」

 キマドリウスは「ゴシゴシゴシゴシ!!!」と、手の平をズボンでこする。
 そのあまりにも素早さは、ズボンから火が起こりそうな勢いだ。

「はは、冗談ですよ。いやー、人の好さそうな領主様で良かったです」

「いや、明らかに人格の計り方がおかしいだろ……マジでビビったんだぞ……」

「はは……では私は早速、業者に話をつけに向かわせて頂きます」

 商人は頭を下げ、部屋から出て行った。
 そしてぽつり一人になったキマドリウス。

「……え? 謝るとかないの……? ……じゃあ、俺はダンジョンの方でも見に行くか……」

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