魔王から領主にジョブチェンジ!? ~ダンジョンから始める領地経営~

一条おかゆ

第10話 領主、戦い終える

 
 ダイーオのダンジョンの主となって、初めての戦闘。
 その後、キマドリウスは5階層最奥部の部屋に来ていた。

「ダンジョンコア、いるか?」

「いますよ、我が主」

 キマドリウスの声に呼ばれて、部屋から10才程の少女が姿を現した。

 その白い肌に白い髪。
 額には鋭い角が生え、明らかに人間ではない。

 だが色や角に目を瞑れば、身体は人間と変わらない。
 だから彼にも気になるのだ。
 ――何故か全裸なのが。

「いつになったら服を着るんだ?」

「私はダンジョンコアです。人間や悪魔とは違い、衣服は必要ありません」

 この少女はダンジョンコア。
 キマドリウスが作ったあの水晶だ。

 だが水晶の姿のままでは何かと不便だ。
 だから移動が出来たり、喋れたり出来るように、人の姿を取らせている。
 何故か全裸だが。

「そういう問題じゃない。倫理的な問題だ」

「それこそダンジョンコアには必要の無い物です」

「はぁ……そうか」

 キマドリウスはため息をついた。
 だがダンジョンコアはそんな様子を歯牙にもかけない。

「それよりも初戦闘お疲れ様です。ダンジョンポイントが120ポイント貯まりましたよ」

「あぁ、それなら全部財宝に変えてくれ」

 ダンジョンポイントとは、ダンジョンで戦闘が行われた時などに貯まるポイントの事だ。
 このポイントを財宝やトラップに変える事で、ダンジョンはダンジョンとして機能していける。

「分かりました。ダンジョン内にランダムで配置しておきますね」

「ありがとう」

 キマドリウスは素直に感謝した。

「……そういえば、良かったのですか?」

「何がだ?」

「マッキーとかいうあの人間の事です。彼1人殺すだけで1000ポイントも入るんですよ」

「……このダンジョンの事を広めてもらわなければいけないから、生かしただけだ」

「それはわざわざ回復をかけて、入り口に運んでまでする事でしょうか?」

「……」

 キマドリウスは押し黙った。
 彼も冒険者を助けたのが、ダンジョンの主として相応しくない行いだと分かっているからだ。

「困ったらだんまりですか……。まぁ私はただのダンジョンコアです。ですから主様の判断に従うまでです」

「……すまないな」

 キマドリウスは静かに感謝し、領主の服に着替え、隠し通路の方へと歩いて行った。

 ◇◇◇

「ふぅ……」

 溜息をつきながらも、キマドリウスは宿屋の扉を開いた。
 冒険者達の様子を確認するためだ。

「それで、気が付いたらダンジョンの前にいたんだよ! あれは絶対ダンジョンボスのおかげなんだって!」

「本当ですか……って、キマ様じゃないですか。どうしたんですか?」

 すると宿屋の一階、食堂では黄色い髪の冒険者マッキーと宿屋のホビットが会話していた。
 そしてホビットがキマドリウスに気付いたようで、話しかけてきた。

「ダンジョンに行った冒険者達がどうなったかなーって気になって。……後の三人は?」

 見た所、食堂に冒険者はマッキーしかいない。
 あと3人いたはずだ。

「あの人達なら、ダンジョンから出るなりどこかへ行ってしまいましたよ」

「そうか……」

 (仲間を見捨てて、完全に逃げたんだな……)

 キマドリウスは悲しそうな顔をした。
 そんな彼に対し、

「なんで領主様がそんな悲しい顔をするんだ?」

 マッキーが疑問を抱いた。

「え!? い、いや! 4人で来たのに帰りは一人って悲しいな~って!」

 キマドリウスの見苦しい言い訳。

「はは、ダンジョンの入場料を取って来たような人がそんな事を言うなんて、おかしいな!」

「そ、そうかな?」

「あぁそうだ。……まるでダンジョンの主のくせに俺を助けたあいつみたいだ」

「ぎくっ!?」

 あまりに的を射た発言にキマドリウスは「ビクッ!」と驚いてしまう。

「それに、声もどことなく似てないか?」

「ぎくくっ!?」

「確か身長も領主様くらいだった気が……」

「ぎくくくっ!!?」

 キマドリウスは顔を逸らし、汗をだらだらと流す。
 隠し事があまりにも下手すぎる。

「ふっ……まぁ何でもいいさ。んっ……ごくっ、ぷはぁー。じゃあ、俺はそろそろいくよ」

 マッキーは酒を一気飲みすると、食堂の席から立ち上がった。
 そして精算を済ませ、宿屋の扉を開き、

「……ありがとな」

 そう一言だけ言い残して、去って行った。

 (気付いて……いるのか? ……まぁあの様子なら、気にしなくてもいいか)

 そんな事を考えながらキマドリウスが立っていると、

「すまんが、領主様はいるかの~」

 入れ替わる形で4人の領民が宿屋に入って来た。
 しかも、何故かその全員が老人だ。

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