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12歳差の恋敵

ムラマサ

父になろうよ

「はぁ……」

あまり思い出したくないことを思い出してしまった。

そう、俺は血も繋がっていなければ義理の父親という立場でもない。

俺の父親は優秀だった。

そして、その優秀者が故に家族とほとんど交流がなかった、だからすぐに離婚してしまった。

俺の父親は離婚が早ければ新しい相手を見つけるのも早かった。

そして、その再婚相手だったのか、杉本香織とその娘の愛だった。

愛は生まれた時から体が弱く、ずっと寝たきりの生活だった。

そのせいで香織さんと、以前の旦那はうまくいかなかったらしい。

香織さんは愛を恨んでいた、愛が生まれるまでは、とても夫婦仲は良かったらしい。

それと同時に、かおりさんは娘を育てるお金に困っていた、そして、俺の父親は俺の面倒を見てくれる人を探していた。


俺の父親と香織さんの間に愛はなかった。

ただ、利害が一致しただけ。

思いの外そんな暮らしはうまくいっていた、
なんだか冷たい気はしたけど、何ひとつ不自由なことはなかった。

俺の父親の仕事がなくなるまでは、

ライバル社の多数出現による不景気により、うちの父の会社はついに倒産まで追い込まれてしまった。

仕事が何よりも大切だった父親が自殺するまで、そんなに時間はかからなかった。

それがきっかけで、香織さんもどこかに行ってしまった。

こんなことが起きてる間、ずっと寝たきりの愛を看病していたのは俺だった。

もう出会ってから5年ぐらいは経っていた。

未だ見たことのない愛の瞳、

その頃16歳の俺の心はだいぶやられていた。


「ごめんなぁ、愛、お前が寝てる間に色んなものがなくなっちゃって。」

そんなときに現れたのが、父の兄の忠さんだった、

それまではずっと病院にいたが、忠さんの家に暮らしていいことになり、そこから病院に通うようになった。

忠さんも仕事が忙しかったが、父よりも笑顔でそして慣れないながらも真剣に俺と愛を育ててくれた。

それは暮らし始めて1年位経った時のことだ。

「すまん勝君、僕は近いうちに海外転勤することになってしまって次いつ帰って来るか分からない…」

「え、」

また戻るのか?愛を守れるのか?そもそもどうやって生きていけばいい?

「いいかい?   君が愛ちゃんのお父さんになるんだ。」

「え、」

同じ言葉が出た、

「何言ってるんですか!たしかに俺は17にしては老け顔かもしれないけど父親は無理ありますよ!」

「僕が言ってるのは見た目の話じゃない、君がもう最後の1人なんだ、愛ちゃんを見てあげれる。」


ズキンッ!




胸が痛む




「誰からも親の愛情を受けれなかったあの子に愛を注いであげれるのは、勝君、君だけなんだ。」




そうか、







愛も俺と一緒なんだ、




「僕も親のつもりで頑張ってきたけど、本当の愛情は君のような子じゃなきゃダメな気がするんだ。」





そして俺は、知らぬ間に流れていた涙なんか気にせず言った、







「俺が愛の、、、、、
                            











          父親になります。」 

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