お互いに好きだけど好きと言えない幼馴染の同居生活

りゅう

温かい。





 「まゆちゃん、ありがとう。まゆちゃんは帰ってりょうちゃんとゆいちゃんと一緒にいてあげて」

 アパートに到着して、陽菜をお布団で横にさせると、春香ちゃんはまゆちゃんにそうお願いする。

 「私は陽菜ちゃんの見張りとりっちゃんの相手してあげないといけないから今日は帰れないってりょうちゃんとゆいちゃんに伝えておいてね。あ、あと…私がいないからって3人でいちゃいちゃしすぎないでね……」
 「うん。わかった。たぶん、いちゃいちゃできる雰囲気じゃないから安心して。後で春香ちゃんのお着替えとか持ってくるね。あ、あと、何かあったら呼んでね。まゆにできることがあればなんでもするからさ」
 「うん。ありがとう」
 「まゆちゃん、ありがとう」

 春香ちゃんと一通りのやり取りを終えたまゆちゃんに私もお礼を言うと、まゆちゃんは気にしないで。と言いながら玄関から出て行く。

 「春香ちゃんも、ありがとう」
 「気にしないでいいよ。どう?少しは落ち着けた?」
 「うん…」
 「嘘はだーめ。陽菜ちゃんの側にいてあげて。食べれるかわからないけど、陽菜ちゃんにおかゆ作って、私とりっちゃんの夜ご飯も作らないとね。私、作るから冷蔵庫の中身使っていい?」
 「あ、いや、私がやるよ…」
 「だーめ。陽菜ちゃんの側にいてあげて。少し2人でゆっくりしてなよ」

 そう言って春香ちゃんは廊下と部屋の間の扉を閉めて、私と陽菜を2人きりにしてくれた。扉の先では春香ちゃんが冷蔵庫を開けたりする音がしていた。春香ちゃんに甘えてばかりいられないし、私も手伝わないと…と思いながら扉を開けようとする。

 「りっちゃん…さん……」

 春香ちゃんには申し訳なかったけど、その一言を聞いた私は春香ちゃんに背を向けて、声がした方に向かっていた。

 「手……」

 そう言いながら私の手にそっと手を当ててくる陽菜の手を私は優しく握る。

 「えへへ…温かい…です……」

 先程よりもだいぶ落ち着いたが、力のない声で陽菜は私に言う。その言葉を聞いた私は気づいたら泣いていた。

 「ずっと…握っててください……」
 「後で春香ちゃんにお礼言いなよ」

 私はそう言いながら陽菜が横になっていた布団に入って陽菜をギュッと抱きしめる。だいぶ落ち着いた陽菜は少ししたらぐっすり眠っていて、私も、落ち着いて疲れが一気に出てきて、気づいたら陽菜を抱きしめたままぐっすりと眠ってしまっていた。陽菜の身体はすごく温かくて、側にいて安心できた。







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