お互いに好きだけど好きと言えない幼馴染の同居生活

りゅう

◯◯◯?





 「まゆ…えっと、こ、これは……」

 さすがにやばいよ。いろいろやばい。春香とゆいちゃんに殺されるしいろいろやばい。

 「えへへ。まゆね。大人になったんだよ。だからね。りょうちゃん、まゆを可愛がって…」

 ベッドに倒れる僕に跨ってまゆはそんなことを言い始めた。まじでやばいよ。これ。どうすればいいの?ねえ?

 「ま、まゆ…落ち着いて…」
 「今ならまゆを好きにさせてあげる。あ、でも今日はまゆの日だからまゆがりょうちゃんを好き勝手しちゃおうかなぁ」
 
 ちょ…まじでやばいよ。まゆ、落ち着いて。ストップ。暴走禁止。

 「なーんてね。冗談だよ」

 慌てふためいていた僕を見て笑いながらまゆが冗談だと言ってくれる。冗談になってないです。

 「まゆだけそういうことしたら春香ちゃんとゆいちゃんに怒られちゃうし…それに、りょうちゃんとゆいちゃんはまだ大人じゃないからあと1年待ってあげないとね」
 
 僕より1年先に20歳になったまゆが大人アピールをしながらそう言って、僕から降りて僕の隣で横になる。

 「ま、まゆ…えっと、ここって…あの、カップルがいちゃいちゃするホテル?」
 「さあ、どうだろうね」
 「えっと、まゆはどうして僕をここに?」
 「りょうちゃんと2人きりで一晩過ごす為だよ。あ、春香ちゃんとゆいちゃんにはまゆの実家にいるって言ってあるから」

 まじでいろいろやばい気がしてきた。ここで、まゆと2人きりで一晩過ごすと考えるとまともでいられる自信がない。

 「さ、じゃあ、ルームサービス頼も」
 「え?」
 「りっちゃんと陽菜ちゃんが2人で来てルームサービスのデザートが美味しかった。って言ってたからめっちゃ気になってたの。コーヒーとかのカップもすごくお洒落みたいで…」

 甘いものと喫茶店巡りが大好きなまゆがめちゃくちゃ語り始めた。まゆの話は途中から頭に入って来なくなって、とりあえずまゆに変なこと吹き込んだあのバカ百合カップルを恨む。

 そう言いながらも、ルームサービスで頼んだデザートとコーヒーが届いたらまゆは目をキラキラさせて写真を撮ったりしていた。こんなにかわいいまゆを見れたから、さっきまで恨んでいた陽菜とりっちゃんさんに少しだけ感謝した。

 「美味しいね」
 「うん」

 満面そうにデザートを頬張るまゆを見て癒されながら僕もデザートを食べる。たしかに、めちゃくちゃ美味しい。

 「りょうちゃん、この後はもっとあまぁいデザートいる?」

 まゆがぐっと僕に近づいて誘惑するような声で言う。スイーツとコーヒー目当てで来たのか、それとも本気でそういうことをしたいと思って来たのか、まゆの真意はわからなかった。いや、わかりたくなかっただけかもしれない。もし、本当は…後者だったら、まゆの本気の同意を得られたら、春香とゆいちゃんを裏切って僕はまゆをベッドに押し倒して取り返しのつかないことをしてしまうかもしれないから。

 「りょうちゃん?大丈夫?具合でも悪いの?もしかして、本当に風邪ひいちゃった?」
 「大丈夫だよ。心配してくれてありがとう」

 僕がそう答えるとまゆはフォークを置いて椅子から立ち上がって僕の背後に回り込む。

 「まゆが温めてあげるね」

 そう言ってまゆは僕を背後から優しく抱きしめてくれる。まゆの腕に温かく包まれて、すごく幸せな気分になる。

 「まゆ、ありがとう」
 「いえいえ、まゆの大好きなりょうちゃんが風邪ひいたら大変だし、まゆのせいで風邪ひいちゃったら春香ちゃんとゆいちゃんに怒られちゃうから…」

 まゆはそう言いながらギュッと強く抱きしめてくれる。優しいまゆが愛おしくて僕は振り返ってまゆを抱きしめる。そのあとはずっと2人で抱きしめあっていた。

 しばらくしてまゆと離れてからベッドに横になる。部屋にあったテレビにまゆがあらかじめ借りてきてくれていたDVDを映して2人で映画を観て楽しんだ。

 映画が終わる頃にはすっかり夜中になっていて僕はまゆとお風呂に入って、まゆを抱きしめてベッドで横になった。







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