お互いに好きだけど好きと言えない幼馴染の同居生活

りゅう

怒ってる。






 「春香ちゃん……」
 「要件は?」

 淡々と私が言うと、春ちゃんは怯えた表情をする。そんな顔しないでよ。って文句を言いたい。え、私ってそんなに怖い?

 でも、今は怖い。と思われるのがちょうどいいと思った。だって、今だけは、春ちゃんに厳しくしないといけないから。春ちゃんが、まゆちゃんとゆいちゃんに謝るまで、私は春ちゃんを許せないから。

 「春香ちゃん…えっと、謝りたくて…」
 「私に?」

 まゆちゃんとゆいちゃんに謝りにきた以外の選択肢はないからね。と軽く圧をかけて春ちゃんに言う。ごめんね。こんな怖い聞き方して……

 「春香ちゃんもだけど…まゆちゃんとゆいさんにも……あと、ついでにお兄ちゃんにも……」

 ついでに。と言う言葉が気になるが、まあ、春ちゃんらしい気もするからよしとしよう。かわいいから多少のことには目を瞑る。

 「りょうた、お姉ちゃん、春ちゃんと2人でお話があるから、リビングに行ってて」

 できるだけ、怖がられるような言い方をする。りょうたがでも…とか春ちゃんを心配するような視線を送ってくるが、気にせず行け。と命令。それを聞いてりょうたと春ちゃんは顔を真っ青にして震えだす。え、私、そんなに怖い?春ちゃんにリビングに行って。と言われたりょうたがリビングに向かい、私と春ちゃんは私とまゆちゃんの部屋に入る。

 「この度は本当に申し訳ありませんでした」

 部屋に入った瞬間、春ちゃんは私にガチ土下座する。私が怖い。って言うのもあるのだろうが、本当に申し訳ない。と思っている気がした。なら、私が言うことは何もない。まゆちゃんとゆいちゃんに許してもらえるように誠心誠意謝るんだよ。そのためにちょっとだけ、手助けする。

 「頭あげていいよ。怒る気ないし、もう怒ってないから」

 玄関でまゆちゃんとゆいちゃんに謝りたいと言われた時から怒ってはいない。でも、まゆちゃんとゆいちゃんも春ちゃんのせいで傷ついたのは事実、万が一にもまゆちゃんとゆいちゃんが春ちゃんを許してくれなかったから悲しいから、こうして部屋に呼び出して私が春ちゃんをめちゃくちゃ怒ったような感じにしてまゆちゃんとゆいちゃんに同情してもらう。

 それともう一つ、春ちゃんを呼び出した理由がある。

 「春ちゃん、ごめんなさい」
 「え?」
 「この前、酷いこといっぱい言っちゃったよね。本当にごめんなさい」

 ずっと、謝りたかった。ずっと、気にしていたから…春ちゃんに酷いこと言って、春ちゃんを傷つけていないか、春ちゃんに嫌われてないか…ずっと、謝りたかった。

 「春香ちゃんは悪くないよ…私が本当にバカだっただけ…私は、気にしてないから春香ちゃんは謝らないで…」
 「許してくれる?」
 「許すも何も春香ちゃんは悪くないから」
 「また、前みたいに春ちゃんに接していい?」
 「もちろんだよ。むしろこっちからお願いしたい。私、春香ちゃんのこと大好きだもん」
 「えへへ。ありがとう。じゃあ、久しぶりに抱きしめちゃおう」

 そう言って、久しぶりに春ちゃんをギュッと抱きしめる。春ちゃんはやめてよ〜。と言いながら私を抱きしめ返してくれる。本当にかわいい妹だ。大好き。







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