お互いに好きだけど好きと言えない幼馴染の同居生活

りゅう

雲行き





 「なんか申し訳ない……」

 寝起きのゆいちゃんに状況を説明すると、自分だけぐっすり眠っていたことを悔いているみたいだった。ゆいちゃんがいつもみたいにゆっくり寝てくれていたおかげで多少落ち着くことができたからこっちとしては感謝すらしているのに…

 「私たちも春香ちゃん探しに行きますか?」
 「うーん。たぶん大丈夫だと思うよ。りょうちゃんなら春香ちゃんがどこにいるかくらいわかると思うし…まゆたちはりょうちゃんが春香ちゃん連れて帰ってくるの待とう」

 たぶんだけど、まゆも春香ちゃんがいる場所は察しがつく。ご両親とゆっくりお話するなら、たぶん、いつも4人で行っている喫茶店だろう。あそこなら人も少ないし、ここから割と近いし…それに、もし、本当にどうしようもない時、いいタイミングで大好きな人が助けに来てくれるだろうから。まゆたちはただ、信じて待てばいい。りょうちゃんが春香ちゃんを連れて帰ってくるのを…


 「嫌だから」

 はっきり、言った。私が、こんなにはっきり言うのは初めてかもしれない。だから、お母さんとお父さんはちょっと戸惑っている。

 「わかるでしょ?私、りょうちゃんのこと好きなの、大好きなの。ずっと昔から大好きなの。りょうちゃんだけじゃなくて、まゆちゃんとゆいちゃんも大好きなの。だから、邪魔しないで…私、もう大人だから…」

 案の定、りょうちゃんとお付き合いすることを考えなおすように言われて、今から1人暮らしをするようにも言われた。でも、私は絶対にそれを受け入れるつもりはない。

 「話はそれでおしまい?ごめんなさい。りょうちゃんとまゆちゃんとゆいちゃん待たせてるから私、もう帰るね。久しぶりに会えたのにゆっくりできなくてごめんなさい。また、4人で帰るね。せっかくきてくれたんだからさ。この後はゆっくり観光とかしてきなよ。海とかすごく綺麗だからさ」
 「春香……」

 お母さんが心配そうな表情で私を見つめる。心配しないでよ。お母さん、私がりょうちゃんと一緒にいるところ、ずっと見てきたでしょう?私、ずっと幸せだったでしょう?これからも、私は…りょうちゃんに幸せにしてもらうよ。まゆちゃんとゆいちゃんにも幸せにしてもらって、みんなを幸せにして、みんなで幸せになるから。それでいいでしょう?

 喫茶店のお会計の分のお金を少し出して、私は先にお店を出る。

 「春香…」
 「りょうちゃん、お迎えに来てくれたの?」
 「うん。えっと、大丈夫?」
 「うん。大丈夫だよ。帰ろう」

 私はそう言ってりょうちゃんと手を繋いで歩き始める。怖くて、振り返れなかった。お母さんとお父さんはどんな表情で私たちを見ているのだろう。怖いよ。ずっと、背後に怯えながら私はりょうちゃんとアパートに帰る。






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