お互いに好きだけど好きと言えない幼馴染の同居生活

りゅう

帰ろう






 ちょっとだけ、気に食わないことがあった。だって、ずるいじゃん。私は…いっぱい我慢したんだよ。辛くて苦しくても我慢してたんだよ……なのに……お誕生日だからって…ずるいじゃん……私だけ……何のためにこうしてるのかわからないじゃん……

 あれ?本当に…どうして私は……こんなに苦しんでいたのだろう。私、何か悪いことした?

 朝、目を覚ましても、隣にきみはいてくれない。この数日間、ずっとそうだった。そのせいで私、毎朝泣いてるんだよ。毎晩、泣いてるんだよ。最近ずっと、1人で寂しくごはん食べてるんだよ。

 なんで私だけ……りょうくん。助けてよ。会いたいよ。好き…だよ……


 最悪の目覚め。そんな感じの朝だった。隣を見てもそこに私の望む景色は広がっていない。私はね。朝、起きたら隣に大好きな君がいて、その隣で、今、私を抱きしめてくれている優しい先輩と、ちょっとドジだけどすごくかわいくてお姉さんみたいな存在である先輩が幸せそうな表情をしておはよう。と一言、声をかけてくれる朝が好きだった。

 たった数日間離れただけなのに…本当に辛い。当たり前だった幸せが…崩れてしまって辛い。崩したのは…私と、今頃、私が大好きな人におはよう。と言ってもらえている人…なんで、私だけ…辛いままなの…私も、幸せになりたい。

 捨てたくないよ。嫌だよ。やっぱり、あなたの…いや、あなたたちの側にいたいよ。好きだもん。大好きだもん。世界で一番、4人でいられたあの部屋が大好きなんだもん。

 「泣かないで…」

 辛くて、泣いてしまっていたら、私を優しく抱きしめて寝ていたはずの人が私をちょっとだけ強く抱きしめてくれる。すごく、温かい。すごく、落ち着ける。そんな気がした。

 「春香ちゃん……」

 優しさで包まれた私は今まで溜まっていたものを全て吐き出すように思いっきり泣いた。陽菜ちゃんもりっちゃんさんも起きてるけど、寝たふりをして聞かなかったことにしてくれている。だから、私はいっぱい泣いた。

 「帰ろう。帰って、りょうちゃんとまゆちゃんが帰ってくるの待とう。予定では、明日の朝には帰ってくるはずだから…」

 今日一日は、誕生日だから、ずっと、あの人と一緒にいる。でも、それが終わったら。帰ってきてくれるんだよね?謝りたい。勝手なことして、勝手に泣いて、勝手に心配かけたから…りょうくんと春香ちゃんに、まゆちゃんと一緒に謝って…これからも一緒にいたい。

 また、4人で幸せになりたい。

 また、あの部屋で4人でおはよう。って言って、4人でおやすみ。って言って、幸せな日々を過ごしたい。

 「帰ろう」

 春香ちゃんの優しい提案に私は泣きながら言葉を発することすらできないまま頷いていた。







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