お互いに好きだけど好きと言えない幼馴染の同居生活
コワイ
 「やだ……」
 まさか、そんなことを言われるとは思っていなかったので、時が止まったような感覚がした。
 「まゆ、何かあったの?」
 明らかにまゆの様子がおかしかった。ゆいちゃんとのお散歩が終わり、部屋に戻ると、春香から今日も一緒に行動しないか?と春に誘われた。と言われて、まゆとゆいちゃんの同意を求めた。ゆいちゃんになら、そう言われてもまだ納得はできた。でも、まさか、まゆに言われるなんて…
 「な、何もないよ。たださ、せっかくのりょうちゃんのお誕生日旅行だから4人で行動したいなぁって…春ちゃんとりょうたくんもさ、2人でいる時間あった方がいいと思うし…」
 今、誤魔化すために適当なことを言っている。誰が見ても明らかだろう。まゆは、優しくて素直で隠し事苦手だから…
 「まゆ、春に何か言われたりした?」
 考えられる可能性はこれしかない。きっと、春に何か言われたんだろう……
 「何も言われてないよ……」 
 嘘だ。
 「ごめん……」
 誤魔化せない。と悟ったまゆは、我慢していた涙を流して謝る。まゆは悪くないよ。そう言って、まゆを抱きしめる。
 「何があったか教えてくれるかな?」
 まゆが泣き止むタイミングでまゆにお願いするとまゆは再び泣き出しそうな表情で何があったかを教えてくれた。
 「ゆいちゃん、まゆちゃんと一緒にいてあげて。りょうちゃん、行くよ」
 「え?どこに!?」
 「お散歩!まゆちゃんとゆいちゃんだけずるいもん。ほら、行くよ。お散歩ついでにバカな妹ぶん殴らないと…」
 あ、春香、怒ってる。それも、相当…言い方はすごく優しいけど、春香が怒ってるのは伝わってきた。
 「ゆいちゃん、まゆのこと、お願いできる?」
 「うん」
 「まゆ、ちょっとお散歩してくるからさ、ゆいちゃんと待っててくれる?」
 「うん…」
 まゆとゆいちゃんに見送られて春香と部屋を出る。部屋を出てから手を繋ぐが、2人で楽しくお喋りしながらお散歩…なんて雰囲気じゃない。春香は僕と繋いでいない方の手でスマホを操作して春に電話をかける。
 「もしもし、春香ちゃん?おはよう」
 「春ちゃん、おはよう。さっそくで悪いんだけどさ…今すぐ会いたいから部屋の番号教えてくれない?りょうちゃんと2人で行くから。要件は…言わなくてもわかるよね?自覚、あるよね?」
 春香、めっちゃ怖い。春が電話越しでひぃ。と言ってスマホを落としたような音するし……
 怒った春香に春は逆らえるわけないので、春は部屋の番号を僕たちに伝える。
 春香と一緒に春とりょうたくんが泊まっていた部屋に到着するとりょうたくんが出迎えてくれた。
 「お、お姉ちゃん…お手柔らかに…何があったかわからないけど、春ちゃん、きっと反省してるから…反省、というか…後悔かもしれないけど…」
 激おこなお姉ちゃんに震えながらそう言うりょうたくんの横を春香は黙って通り過ぎる。怖いよ。
 部屋に入ると、春がすごい勢いで土下座していた。春香ちゃんやべえ。
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