お互いに好きだけど好きと言えない幼馴染の同居生活
メセン
 「お、お酒……」
 大富豪が終わり、夕食の時間、春とりょうた君の分の夕食も僕たちが借りている部屋に運んでもらい、みんなで食べよう。ということになったのだが……春とりょうた君はお母さんたちの代理で来たわけだが、お母さんたちが夕食時に別で頼んでいたお酒をキャンセルし忘れたみたいで、部屋の机に料理と一緒にお酒が並べられていた。どうするのこれ…春香しかお酒飲めないけど春香には飲ませたくないぞ……
 「わ、私が飲む?」
 「「「「「絶対ダメ!」」」」」
 春香以外全員が慌てて春香を止める。酔った春香は何しだすかわからないから怖い……
 「とりあえず、放置」
 そう言ってお酒を部屋の隅においてみんなで食事を楽しんだ。すごく豪華な食事でみんなでちょっとだけ騒ぎながらゆっくり食べ、食べ終えた後はもう一度温泉を堪能しに向かう。さっきは1人で温泉だったけど、今度はりょうた君も一緒だから嬉しい。
 「えへへ。春ちゃん、背中流してあげるね。私と一緒に入ろう」
 「嫌です。私は春香ちゃんとまゆちゃんと入るので」
 春にきっぱり断られて涙目になるゆいちゃん…ゆいちゃんが涙目になっているので優しく頭を撫でてあげたらそのまま抱きしめられた。かわいい。
 「春ちゃん、少しはさ、ゆいちゃんと向き合ってあげてよ」
 さすがにゆいちゃんがかわいそうだと思って春香が春にお願いするが、春は何も言わない。春香相手に春がこんな態度を取るのは珍しい。
 ゆいちゃん大丈夫かなぁ。と思いながら女性陣とわかれて僕はりょうた君とお風呂場に向かう。春香とまゆがいるから大丈夫だ。と自分に言い聞かせながら服を脱いでいるとりょうた君に心配そうな表情で見られていた。
 「春がご迷惑をおかけしてすみません」
 「あはは。大丈夫だよ。りょうた君は謝らなくていいよ。昔から僕が甘やかしてたからあんな風に育ったわけだし……」
 妹のことで妹の彼氏から謝られるのは不思議な感じがした。そもそも、僕にとってりょうた君は本当の弟みたいな感じだし、りょうた君と春が付き合っている。というのも、お似合いだと思うが、ちょっと不思議な感じもしている。
 「春が迷惑かけてない?」
 「春ちゃんにはいつも助けられてますよ。僕がダメダメだから…春ちゃんにいっぱい迷惑かけてるし、いっぱい助けてもらってるし…こんな僕をずっと、好き。って言ってくれる春ちゃんには感謝しかしてませんよ」
 「そっか…あんな妹だけど、改めて、よろしくお願いします」
 りょうた君になら、安心して春をお願いできる。ずっと、春と一緒にいるところを見てきたから。2人がずっと、幸せそうにしているのを見てきたから。
 「もちろんです。りょうさんも…お姉ちゃんのことよろしくお願いします。幸せにしてあげてください」
 りょうた君の目には、僕と春香はどのように映っていたのだろうか。僕が、春とりょうた君をずっと幸せそうに見えていたみたいに、ずっと幸せそうに映っていたのだろうか。
 まゆと一緒にいる時やゆいちゃんと一緒にいる時も、春香は幸せそうだと、りょうた君の瞳には映っていたのだろうか。
 ふと、気になって、聞いてしまった。
 「りょうた君から見てさ、今の春香は幸せそう?」
 と……
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