お互いに好きだけど好きと言えない幼馴染の同居生活
サプライズと3択
 「りょうちゃん、もう少しだけ待って…」
 「うん。わかった」
 アパートの部屋の扉の前でまゆに言われて、少しの間まゆとアパートの扉の前で立つ。季節は11月、夜はかなり寒い時期なのでまゆの手を強く、優しく握ってまゆとお互いを温めあう。
 「もっとこうしてたいけど…時間だから入ろう」
 「うん」
 名残惜しそうに僕から手を離してまゆはアパートの玄関を開ける。
 「りょうちゃん、先に行って」
 まゆが小さな声で僕に言うので、僕はわかった。と小さな声でまゆに返事をして、ただいま。と言いながらリビングの扉を開く。
 「「「お誕生日おめでとう」」」
 正直、驚いたフリをしようと思っていたが、扉を開けた瞬間、扉の前にいた春香とゆいちゃん、そして僕の背後にいたまゆがクラッカーを鳴らして、僕の誕生日をお祝いしてくれた。クラッカーまで用意してくれてるとは思わなかったし、まさか背後からも鳴らされると思ってなかったからびっくりした。
 「びっくりした?」
 「うん。めっちゃびっくりした」
 「えへへ。サプライズ」
 びっくりした僕を見て満足そうに微笑むゆいちゃんがめちゃくちゃかわいかった。
 「春香、まゆ、ゆいちゃん、ありがとう。めっちゃ嬉しいよ」
 「………まゆちゃん、バレてた?」
 僕の反応を見た春香がジト目でまゆに問い詰める。鋭い……
 「ご、ごめんなさい…えっと、みーちゃんに口止めするの忘れてて……」
 「まゆちゃん…しっかりしてよ……」
 「まあまあ、まゆは悪くないからさ…責めないで。それに、こうやってお祝いしてもらえるだけで最高に幸せだから。いろいろ準備とかしてくれてありがとう」
 春香にそう言いながら、春香の頭を撫でてあげる。ゆいちゃんの頭も撫でてあげて、4人で夜ご飯を食べ始める。今日の夕食は僕が大好きな料理を3人がそれぞれ作ってくれていた。
 春香はからあげ。昔から大好きだった春香のからあげがいっぱい用意されていてさっきからお腹が鳴りまくっている。まゆはハンバーグ、一番最初にまゆが僕に作ってくれた料理でめちゃくちゃ大好きな料理だ。一口サイズのハンバーグもいっぱい並んでいてめっちゃ美味しそうだし、一口サイズのハンバーグはなんか可愛らしかった。いつの間に作ったんだろう…と思っていたら、バイト前に一度戻って作ってくれていたみたいだ。ありがとう。ゆいちゃんは肉じゃが、すごく家庭的な味付けで食べるとすごくほっこりする僕が大好きなゆいちゃんの手料理だ。
 3人が作ってくれる料理で、僕が一番好きな料理をそれぞれ用意してくれた他にもいっぱい料理が用意されていて、バイト終わりの空腹のお腹がぐーぐーうるさい。
 「りょうちゃん、はい、あーんしてあげる」
 「あ、春香ちゃんずるい!まゆもあーんしたい」
 「私もです。はい、りょうくん、あーん」
 春香もまゆもゆいちゃんも自信たっぷりの表情で自分の得意料理を箸で掴んで僕に向ける。いつも仲がいい3人だが、自信たっぷりの料理に関しては譲れないらしく、3人とも自分が真っ先に食べてもらえると信じて疑わない表情をしている。
 この場合、春香のからあげを選ぶ→まゆ、不貞腐れた表情をして、ちょっと拗ねる。ゆいちゃん、おこる。
 まゆのハンバーグを選ぶ→春香、悲しそうな表情をする。最悪涙目…ゆいちゃん、おこる。
 ゆいちゃんの肉じゃがを選ぶ→春香、悲しそうな表情をする。最悪涙目…まゆ、不貞腐れた表情をして、ちょっと拗ねる。
 どれを選んでも割と大変なことになる気がする。この場合、どうすればいいのだろうか。わからないので、とりあえず……
 「えー、どれか一つなんて選べないよ。全部、僕の大好物だもん。全部好きだから順番に全部食べるね」
 「じゃあ、一番好きな順から食べてね」
 自分のハンバーグが選ばれると信じて疑わないまゆが自信たっぷりの表情で言う。
 「りょうちゃん、手、疲れるから…早くして…」
 春香が少しだけ手をプルプルさせながら言う。え、かわいい。
 「りょうくん、わかってるよね」
 ゆいちゃん、怖いよ。自分の料理を一番に選べ。と言う圧がすごい。いや、ゆいちゃんの肉じゃがめちゃくちゃ大好きだからこのままかじりつきたい。
 「♪♪♪」
 まゆなんか、いつもバイト中に急いでレジ入ってください。と言う合図のベルの音を真似して早く食べてアピールをしてくる。
 「春香、まゆ、ゆいちゃん、目、瞑って」
 「「「え?」」」
 え?と言いながら僕がお願いすると、3人はすぐに目を瞑ってくれた。その隙に僕は3人全員の箸から料理を受け取った。
 「美味しかったよ」
 「「「え?」」」
 なんか、3人とも少しだけ不満そうな表情をするが、とりあえず、美味しかったよ。とべた褒めして満足していただいた。この3択心臓に悪いからやめてほしい。
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