お互いに好きだけど好きと言えない幼馴染の同居生活

りゅう

秘密の計画





 学祭が終わり、11月…アパートの女子部屋に女の子3人で集まる。

 「りょうちゃんは?」
 「りっちゃんと学祭の後片付けに出かけて数時間帰ってきません」
 「よし」

 なんか、まゆちゃんとゆいちゃんが謎の確認をしている。

 「それでは、第一回!りょうちゃんのドキドキハッピーバースデーパーティーの企画会議を始めまーす」
 「イエー」

 まゆちゃんとゆいちゃんノリノリだなぁ。私、このテンションについていけるのかな?

 そう。りょうちゃんが留守にしてる今、あと1週間と少し経過したら迎えるりょうちゃんのサプライズ誕生日会の計画を立てよう。となった。11月11日は私たち3人が日頃の感謝とかいろいろな感情をりょうちゃんに思いっきり伝えて、りょうちゃんには今までで1番幸せな誕生日を迎えて欲しい。だから、私もまゆちゃんもゆいちゃんも、必死になって計画を立てようとしている。

 「まず、当日なんだけど…まゆとりょうちゃん…シフト入れちゃった…ごめんなさい……」
 「まゆちゃん、ずるい!誕生日にりょうくんと2人きりなんて…抜け駆け禁止!今すぐ取り消して!」

 謝るまゆちゃんにゆいちゃんが猛抗議をする。ゆいちゃん、気持ちはめっっっちゃわかるよ。でも、今は抑えよう。サプライズの誕生日会をするなら…まゆちゃんがりょうちゃんを自然な形で連れ出してくれるのは都合がいいんだから……でも、やっぱり、ずるい……

 「ほんとごめんなさい…りょうちゃんが何も躊躇いなくシフト入れちゃうから…まゆも何も考えずにシフト入れちゃって後でりょうちゃんの誕生日だって気付きました……」
 「すぐにりょうちゃんの誕生日って気づけないなんて、りょうちゃんへの愛情が足りてないんじゃないの……」
 「春香ちゃんのいじわる……まゆがりょうちゃんのことめちゃくちゃ好きだってわかってる癖に……」

 都合がいい。と自分に言い聞かせてもやっぱりちょっと…いや、かなりずるいのでちょっといじわる言ったらまゆちゃんは頬を膨らませて不満を表現する。かわいいなぁ。

 「私も…りょうちゃんの誕生日にりょうちゃんと2人きりになりたいのに……」
 「ゆいちゃん、気持ちはわかるけど…今はぐちぐち言うのはやめよう。まゆちゃん、それなりの対価は払ってもらうからね」
 「はい。しばらくの間…じゃんけんでグーしか出さないようにします……」
 「りょうちゃんの誕生日までずっとグーでよろしくね」
 「え…春香ちゃん…それは厳しい……」
 「拒否権、あると思う?」
 「ナイデス」

 まゆちゃんを半強制的に頷かせる。これでも、妥協したくなかったが…りょうちゃんのサプライズ誕生日会を成功させるには必要だから…我慢することにする。

 「じゃあ、当日のお話しようか…えっと、どうする?朝、起きて1番におめでとうって伝える?」

 まゆちゃんの質問にゆいちゃんは悩ましいですよね。と呟く。朝、1番におめでとう。って伝えたい。だけど、伝えたらサプライズ誕生日会にならない可能性がある。と言う懸念があるのだろう。

 「ちなみに、りょうちゃんが生まれた時間は11月11日の22時18分です」
 「春香ちゃん…なんでそんな細かい時間まで知ってるの?」

 まゆちゃんがちょっと引いた表情で私に尋ねるが、昔、りょうちゃんのお母さんから教えてもらったことを覚えていただけだから……

 「でも、ちょうどいい時間じゃないですか?いつもまゆちゃんとりょうくんがバイトから帰ってくる時間、それくらいですよね」
 「うん。そうだね」
 「じゃあ、まゆちゃんに指令、りょうちゃんに22時18分にリビングの扉開けさせること!りょうちゃんがリビングの扉開けたら私とゆいちゃんがクラッカー鳴らすから3人でおめでとうって言おう」
 「なかなかきつい指令だね…」
 「誕生日の日にりょうくんを連れ出すんですからそれくらいしてください」

 ゆいちゃんの言う通り。それくらい頑張ってもらわないと…

 「あと、ゆいちゃん、りょうちゃんの誕生日だからって…暴走しないようにね……」
 「言い方……でも、そうですよね。気をつけます」

 りょうちゃんの特別な日に、りょうちゃんと特別な思い出を作りたい。今はだいぶ落ち着いたゆいちゃんだけど、りょうちゃんの特別な日にこの感情が暴走して、また、以前のようになってしまうかもしれない。だから、そうならないようにあらかじめ釘を刺しておく。

 せっかくのりょうちゃんの誕生日、1年に一度の特別な日だから…りょうちゃんには幸せな思い出だけを残して欲しい。だから、しっかりと不安要素は排除しておく。ゆいちゃんに釘を刺した後は、当日の料理とかリビングの飾り付けとかいろいろ話し合っていたら、あっという間に時間は過ぎ去ってしまった。





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