お互いに好きだけど好きと言えない幼馴染の同居生活

りゅう

学祭演奏後





 「陽菜、お疲れ様」

 学祭で、まゆ先輩が指揮をした曲の演奏が終わるとりっちゃんさんは笑顔で陽菜にお疲れ様。と言ってくれる。

 「ありがとうございます。りっちゃんさんもお疲れ様でした」
 「まゆちゃんもなかなか粋な計らいをしてくれるねぇ…どうせ、どこかの優秀な後輩と私の信頼できる友達も関与してるんだろうけど」

 笑いながらりっちゃんさんは言う。まあ、そうだよね。陽菜は…本当に素敵な幼馴染みを持つことが出来てすごく幸せだ。

 みんなの演奏が終わると、病室の中はすごく静かになる。りっちゃんさんにイヤホンを返して先程のようにベッドで横になる。陽菜がりっちゃんさんが横になれるスペースを作ってベッドをポンポンと叩くと、りっちゃんさんは陽菜の隣で横になって、先程のように陽菜を抱きしめてくれる。

 「陽菜、電話鳴ってるよ」
 「え?あ、本当だ」

 りっちゃんさんに言われてスマホを確認するとたしかに電話通知が来ていた。誰からの電話なのかも確認せずに陽菜は電話に出る。

 「あ、陽菜ちゃん。お疲れ様。りっちゃんも側にいる?」
 「春香ちゃん!お疲れ様。うん。今、陽菜の隣にいるよ」
 「そっかそっか。よかった。あれ…ねえ、りょうちゃん、ビデオ通話ってどうやるの?」
 「え、そこ押せばビデオ通話になるはずだよ」
 「え?え?どれ?わかんない」
 「もう、ちょっと貸して…」

 陽菜とりっちゃんさんは何を聞かされてるんだろう…春香ちゃんとりょうちゃんのいちゃいちゃトークを聞かせるために電話してきたのだろうか?と、陽菜が思っているとビデオ通話が始まり、陽菜のスマホの画面にりょうちゃんとまゆ先輩が映り込んだ。

 「春香、見えてる?」
 「うん。見えてるよ。こっちもビデオ通話にするね」

 そう言ってビデオ通話にすると、画面に映り込んだ陽菜とりっちゃんさんを見て、まゆ先輩が昼間からいちゃいちゃしないの!と言ってくるが、まゆ先輩だって、今、りょうちゃんの腕をギュッと抱きしめてるじゃん……

 「まゆ先輩、さっきはありがとうございます。すごく嬉しくて…すごく、楽しかったです」
 「えへへ。陽菜ちゃんとりっちゃんと一緒に演奏できてまゆも楽しかったよ」
 「まゆちゃん、本当にありがとうね」

 陽菜の隣にいるりっちゃんさんもまゆ先輩に感謝をする。

 「感謝なら、企画した春香ちゃんとりょうちゃんに言ってあげて」

 やっぱり、春香ちゃんとりょうちゃんの提案だったんだ…本当に…ありがとう。じゃ足りないくらい。いっぱい…感謝しないとな……

 陽菜はすごく…不自由な身体を与えられた……でも、その代わりに、今も隣にいて陽菜を世界一幸せにしてくれる最愛の人と、陽菜にはもったいないくらい素敵な幼馴染み、そして、こんな陽菜を受け入れてくれる素敵な仲間を持つことができた。不自由なことはいっぱいあるけど、その代わりに、こんなにも素敵な人たちとの繋がりを得られて…本当によかった。陽菜は本当に…幸せだ。

 「じゃあ、今から、みんなで学祭楽しもう!」

 ゆいちゃんが画面に映り込む。ゆいちゃんの隣にはさきちゃんとこうくん、みはね先輩、ゆき先輩もいる。

 「今からみんなで学祭回ろうって話になってるんだけど、陽菜ちゃんとりっちゃんも一緒に来てくれるよね?」

 春香ちゃんにそう言われて、陽菜は嬉しすぎて泣いてしまう。

 「ちょっと、春香ちゃん…今日、何回、私の陽菜ちゃんを泣かせるの?」
 「な、泣いてないですぅ」

 ちょっとだけ、強がりを言って、涙を拭って、笑顔で春香ちゃんに…みんなにお礼を言って、病室からだけど…陽菜とりっちゃんさんもみんなに同行させてもらうことになった。






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