お互いに好きだけど好きと言えない幼馴染の同居生活
退院
 夏休みの楽しい時間はあっという間に時は流れて9月、秋の訪れを感じる時期だが、大学はまだ夏休み。
 とはいえ、9月後半から始まる授業に備えて、実家に帰省していた人たちもほとんど戻ってきている為、部活の活動が本格的に再開される。
 今は定期演奏会に向けて、週に2回は全体練習と合奏が行われているし、練習日以外も誰かがホールを開けて毎日、誰かがホールを開けているような状況だった。
 「陽菜ちゃん、大丈夫?」
 今日は練習日、集合時間に舞台に集まる前にまゆちゃんに聞かれた。
 「うん。大丈夫だよ。昨日会ってきたけどめちゃくちゃ元気だったし明日退院したらそのままお泊まりに来るって言ってたから」
 「そっか。ならよかったよ。まゆとかりょうちゃんと春香ちゃんにも元気です。って連絡は来てたけどやっぱり心配で…」
 「あはは。全然元気だったから安心して。心配してくれてありがとう」
 そうやってまゆちゃんに答えてまゆちゃんと一緒に舞台に向かう。陽菜ちゃんは指揮者が決まった日からずっと、部活を休んでいる。最初は、ちょっと体調を崩していただけだったが、なかなか治らなくて少しの間、検査も兼ねて入院した結果、そうなってしまった。
 陽菜ちゃんが入院してから、バイトと部活がない日は毎日陽菜ちゃんのお見舞いに行っていたが、いつも元気いっぱいだった。
 部活の練習が終わり、アパートに帰るとすぐにスマホを開いて陽菜ちゃんに連絡をする。
 明日はお泊まりしに来る?と尋ねるとすぐに既読がついて、行きます!と即答された。陽菜ちゃんに明日、病院まで迎えに行くことを伝えて、陽菜ちゃんと今日の出来事とかを伝えた後、夜ご飯を食べてお風呂に入って眠る。
 そして、翌日の朝、めちゃくちゃ早起きして、夜ご飯の支度をして、帰ったらすぐに夜ご飯が食べれるようにしてからアパートを出て、朝一から病院に向かった。
 
 「陽菜、おはよう」
 「りっちゃんさん!おはようございます」
 病院の個室のベッドで退屈そうにしていた陽菜ちゃんに笑顔で出迎えられて、私は陽菜ちゃんのベッドの隣にある椅子に座らせてもらう。
 「元気そうでよかった」
 「あはは。心配しすぎですよ。りっちゃんさんも、春香ちゃんもりょうちゃんもまゆ先輩もみんな…」
 「それだけ大切にされてるってことよ」
 そう陽菜ちゃんに言いながら、私は陽菜ちゃんが退院する為に陽菜ちゃんの荷物の整理を始める。
 「あ、陽菜がやるから大丈夫ですよ」
 「いいから、病人は大人しくしてな。私がしてあげたくてしてあげてることだから気にしないで」
 そう言ってテキパキと陽菜ちゃんの荷物の整理を終えて陽菜ちゃんのご両親が手続きなどを終わらせるのを待つ。
 「今日は本当に帰らなくていいの?」
 「はい!大丈夫です!りっちゃんさんと一緒にいたいので」
 ご両親からもよろしくお願いします。と言われているが、なんかちょっと申し訳ない気はする。とはいえ、私も陽菜ちゃんと一緒にいたいのでまあ、よしとしよう。
 陽菜ちゃんと手を繋いで電車に乗って、アパートに帰る頃にはすでに夕方になっていて、帰ってすぐに陽菜ちゃんをソファーに座らせて用意していた夜ご飯を温める。
 「今日の夜ご飯なんですか〜?」
 「スパゲッティだよ。陽菜好きだよね?」
 「りっちゃんさんが作ってくれたものならなんでも好きです〜」
 「はいはい。ありがと。もう少しで出来上がるから座って待ってて」
 そう言って野菜スープとミートソースを温めてパスタを茹でる。あとは冷蔵庫からサラダを取り出す。
 「さ、食べよ」
 「いただきまーす」
 めちゃくちゃ美味しそうに食べてくれる陽菜ちゃんを見て朝から頑張って作ってよかった。と思える。ほっべにミートソースが付いてるのに気づかないくらい夢中で食べてくれる陽菜ちゃんのほっぺに手を伸ばしてミートソースを拭きとる。
 「陽菜、本当に大丈夫なんだよね?」
 念のため、確認する。今回の入院はいつもより長かった気がするから。
 「大丈夫ですよ。りっちゃんさんは心配性ですね」
 なんか薄らと違和感を感じる言い回しのような気がしたが、陽菜ちゃんがそう言うなら信じることにする。
「恋愛」の人気作品
書籍化作品
-
-
1512
-
-
3
-
-
140
-
-
3087
-
-
381
-
-
0
-
-
337
-
-
4
-
-
63
コメント