お互いに好きだけど好きと言えない幼馴染の同居生活

りゅう

4人幸せ




 久しぶりに、まゆを抱きしめた。思いっきり、まゆを抱きしめて、まゆと手を繋いで歩いた。久しぶりに見るまゆの笑顔はすごく眩しくて、かわいくて、美しかった。

 すごく幸せだったけど今から会う春香になんて言って、なんて声をかければいいのかわからなかった。春香を、傷つけてしまわないか…春香がどこかに行ってしまうのではないか、いろいろと考えて、怖くなってしまう。

 「大丈夫だよ。りょうちゃん。春香ちゃんは大丈夫。また、4人で頑張ろ」

 僕が不安を感じる時はいつも、まゆが僕に声をかけてくれる。優しく、大丈夫だよ。って言って、温かい手を差し伸べてくれたり、ギュッと抱きしめてくれたり、いっぱい、大丈夫って思えるくらいの温かさをくれる。

 「まゆ、ありがとう」
 「えへへ。どういたしまして」

 そんなやりとりをしながら歩いていると春香の姿が目に映った。隣には、もう1人の僕の大切な女性がいて、僕の姿を見て最高の笑顔を向けて僕の元に駆け寄ってきて僕に思いっきり抱きついてきたので僕はゆいちゃんを受け止める。

 「ゆいちゃん、寂しい思いさせてごめんね」

 ゆいちゃんと会うのは本当に久しぶりだった。まゆと2人きりの間と、春香と2人きりの間、合わせると1週間以上会っていないことになる。きっと、すごく、寂しかっただろう。

 「ほんとだよ…ちゃんと反省して…」
 「うん。ごめんね」

 そう言ってゆいちゃんをギュッと抱きしめる。春香とまゆは何も言わずにその様子を黙って見てくれていた。

 「まゆちゃん、ゆいちゃん…え、えっと…」
 「謝らないでいいよ。まゆもゆいちゃんも春香ちゃんに同じことしたから、おあいこね」
 
 まゆに笑顔でそう言ってもらえて春香はありがとう。と言いながら、少しだけ泣いてしまう。4人でまゆの車まで歩いて、まゆの車に到着する。

 「まゆちゃん、ゆいちゃん、じゃんけん…しよ……」

 以前のように、平等にじゃんけんで決めようと春香が提案して、まゆとゆいちゃんは笑顔で同意するのを見て、僕は安心した。春香もまゆもゆいちゃんも、そして…僕も…4人での生活を…あの時の幸せをなんだかんだで気に入っていて、また、4人でいたい。と思っているのだろう。

 だからこそ今、こうして目の前で幸せそうな表情をしている3人を見ていられるのだろう。

 「やった!まゆの勝ち!ほら、りょうちゃん、まゆの隣座って!春香ちゃんとゆいちゃんは後ろ座ってね」

 じゃんけんに勝って嬉しそうにはしゃぐまゆと、じゃんけんに負けても笑って2人で後ろ座ろうねー。と笑いながら後ろの席に座る春香とゆいちゃん、じゃんけんに勝ったまゆも負けた春香とゆいちゃんも、みんな幸せそうで、本当に安心する。

 その日は帰ってからもいっぱいじゃんけんをした。誰が僕の隣でご飯を食べるか、誰が僕と一緒にお風呂に入るのか、誰が僕の隣で寝るのか、他にもいっぱいじゃんけんをした。

 一度、バラバラになって、4人全員が、4人でいられる幸せの有り難さを痛感した。だから、じゃんけんに負けても、負けた2人はなんだかんだで楽しそうにしていたりしていて、以前より、なんというか、安定感が増した感じがする。

 今回、4人で一度、バラバラになったことは、4人での幸せをより豊かなものにするために、きっと、必要だっただろう。

 「春香、まゆ、ゆいちゃん、みんな大好きだよ」

 夜、寝る前に僕は3人に言う。3人ともすごく嬉しそうで、幸せそうな表情をしてくれた。

 「私も、りょうちゃんのこと大好き。まゆちゃんとゆいちゃんも大好き」
 「まゆも、りょうちゃんのこと大好き。春香ちゃんとゆいちゃんも大好き」
 「私も、りょうちゃんのこと大好き。春香ちゃんとまゆちゃんも大好き」

 いっぱい大好きって言って、大好きって言われて、お互いがなんか恥ずかしくなってしまい、その日はすぐに電気を消して寝てしまった。

 久しぶりに両手を抱きしめながら眠れて、久しぶりにすごく、温かい気持ちで眠れた気がした。






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