お互いに好きだけど好きと言えない幼馴染の同居生活

りゅう

彼女と帰省






 「りょうちゃん、今日もバイトお疲れ様。さ、帰ろ」

 まゆにお願いをされた翌日、春香とゆいちゃんにまゆがお願いをして多少強引にだが春香とゆいちゃんの了承を得ることが出来たので、今日、僕は今からまゆと一緒に2人でまゆの実家に帰省する。

 「そろそろ教えてくれない?どうして2人だけで帰りたいのか…」
 「うーん。久しぶりにりょうちゃんを独占したいなぁ。って思ったから。ゆいちゃん見てたら羨ましくなってたまにはまゆもりょうちゃんを独占したいなぁ。って前々から思ってたの」
 「そっか……」

 なんとなくだけど、そんな気がしていたので驚いたりはしなかった。

 「怒らないの?」
 「怒らないよ。実際にまゆと2人きりでゆっくり過ごせる時間が最近なかったのは事実だからさ…ただ、春香とゆいちゃんには申し訳ないから今度埋め合わせの機会作るからね」
 「はーい。ありがと。まゆのわがまま聞いてくれて」

 そう言いながらまゆは片手をそっと僕の片手の上に置く。僕はまゆの小さくて柔らかくて、温かい手をそっと握る。

 「りょうちゃん、まゆのわがまま、もう一つだけ聞いてくれる?」
 「言ってみて」
 「今日だけでいいからさ…まゆだけのりょうちゃんでいてくれない?」

 まゆだけのりょうちゃん…か……その願いを叶えてあげることは…例え、春香とゆいちゃんが側にいない時でも……

 「ご、ごめん。やっぱ、今のナシ、忘れて!変なことお願いしてごめんね」

 僕が反応に困っているのを見たまゆは慌てて前言撤回してくれる。ホッとする気持ちもあるが、申し訳ない気持ちも僕の中に存在し、すごく複雑な心境になってしまう。

 「まゆ、ごめんね」
 「謝らないで、変なこと言ったまゆが悪いから…りょうちゃんはまゆだけのものじゃないもんね。仕方ないよ。ほんと、ごめんね。忘れて…まゆ、りょうちゃんに不満があるわけじゃないからさ…ただ、1回だけ、体験したかっただけだから……」

 忘れて…と言いながら、一瞬だけ、すごく残念そうな表情をしたのを見逃すことはできなかった。まゆに、あんな表情をさせてしまい、すごく情けなく感じてしまう。

 「まゆ、今日だけ…本当に、今日だけなら…いい、よ…」

 まゆにあんな表情をさせてしまった後悔からか、僕はまゆのお願いを聞き入る選択をした。

 「いや、春香ちゃんとゆいちゃんに悪いからいいよ。ごめん、忘れて…」
 「今日だけ…だよ……」
 「本当にいいの?」
 「うん。いいよ」

 いいよ。と言った後、運転中のまゆの表情を見ると、すごく嬉しそうで、幸せそうな表情をしていた。まゆのこの表情を見れてよかった。と思うが、春香とゆいちゃんに申し訳なくて歯痒い感じになってしまう。

 「ありがと。じゃあ、今日だけは…よろしくね」
 「うん」

 そうやってまゆと約束をすると、まゆの実家に到着して駐車場に車を停めて車から降りる。まゆが実家の鍵を開けてまゆの実家に入ると、玄関だけでなく、玄関から見えるリビングも真っ暗だった。

 「今日は、両親が2人とも夜勤だから、まゆと2人でゆっくりできるよ」
 「帰省とは?」
 「まゆがりょうちゃんを独占するための口実なのでした」

 ごめんね。と言いながらまゆは一足先に玄関で靴を脱いで廊下に足を踏み入れて僕と向かい合う。

 「今日は…まゆとりょうちゃん…2人きりだから…りょうちゃんのまゆを好きに使ってください……」

 顔を赤くしながら僕に言うまゆ…チート級にかわいい。なんか嵌められた感じを忘れさせてしまうくらいの脳死級のかわいさをぶち込まれて僕も顔を赤くしてしまう。

 「えっと、夜ご飯にする?お風呂にする?それとも、まゆにする?」

 ダメ、チート級にかわいい。やばい。かわいすぎる。何これ、天使?

 「お、お腹すいたし…夜ご飯にしよ……」
 「えー、そこはまゆがいい。って言ってよー」

 不満そうに頬を膨らませるまゆもめちゃくちゃかわいい。まゆと一緒にリビングにお邪魔する。キッチンにまゆが立ち、テキパキと夜ご飯の準備をしてくれる。今から作る。と言われてちょっとびっくりしたが、まゆの手料理が食べられるなら幸せだ。僕も少しお手伝いをしながら2人で夜ご飯を作り、2人で美味しくいただいた。

 まゆが何回もあーん。を求めてきて、まゆがかわいすぎて僕が悶えていたのと、お互いに食べさせあっていて明らかに効率が悪い食事をしたが、すごく楽しくて、幸せだった。







コメント

コメントを書く

「恋愛」の人気作品

書籍化作品