お互いに好きだけど好きと言えない幼馴染の同居生活

りゅう





 「陽菜ちゃんと一緒にいれなくて寂しかったってのはわかりますけど、だからってりょうくんにちょっかい出していい理由にはならないですよね。りょうくんは…私の……なんですから……」

 ゆいちゃんが不満を爆発させるようにりっちゃんさんに言う。

 「ゆいちゃん…」
 「ごめんなさい…寂しくて……最初は、春香ちゃんに隣にいて欲しかったけど……それが無理だったから隣にいてくれれば誰でもいいって思ってた……ごめんなさい。りょうちゃんにちょっかい出していい理由にはならないけど…」
 「寂しかった。って言えば何でも許されるんですか?私のりょうくんにちょっかい出して私たちの関係壊しかけて自分たちはいい感じに仲直りは都合良すぎませんか?」
 「ゆい!」

 先程からゆいちゃんを止めようとしていたまゆが、感情を爆発させていたゆいちゃんを怒鳴るようにして強引に止めた。

 「りっちゃん、陽菜ちゃん、ごめんね。申し訳ないけど、4人にしてもらっていいかな?」
 「う、うん。まゆちゃん…春香ちゃんにゆいちゃんにりょうちゃんもごめんなさい。陽菜、帰ろうか」

 まゆに怯えるようにしてりっちゃんさんはまゆの望み通り陽菜を連れて帰って行く。陽菜はりっちゃんさんに連れられてご迷惑おかけしました。とだけいい残して出て行った。

 「ゆいちゃん、怒鳴ってごめんね。怖かったよね…ちょっ、りょうちゃんと春香ちゃんまで怯えないでよ。大丈夫、まゆ怒ってないから」

 まゆは笑顔でそう言うが、それが嘘だと言うことはその場にいた全員がわかっていた。

 「りょうちゃん、信じていいんだよね。やましいことは何もないんだよね?」
 「う、うん。それだけは信じて…」
 「わかった。信じるよ。春香ちゃんとゆいちゃんも信じるよね?」

 まゆの脅迫のような問いかけに春香は黙って頷いた。まゆの圧に屈したというよりも、本当に僕を信じてくれているような仕草をしてくれてほっとする。いつのまにか泣き止んでいて少し安心した。

 「まゆちゃんは…何で信じられるんですか……実際、一緒に寝てたのは事実で証拠もありましたし見ましたよね?りょうくんにその気はないかもしれないけど…りっちゃんさんは何考えてるかわからないんですよ…りっちゃんさん、前はりょうくんのこと好きだったんですよね?そんな人がりょうくんの隣で寝てたのに何で信じられ…」
 「ゆい…それ以上言ったら怒るよ」

 まゆがブチギレ寸前と言った様子でゆいちゃんに言う。

 「気持ちはわかるよ。でも、りっちゃんはそんなことしない。ゆいちゃんとりっちゃんを一緒にしないで…」
 「まゆ、言い過ぎ…」

 以前から…薄々感じていた。たぶん、まゆの中に…いや、春香とまゆの中に…ゆいちゃんに対する不満のような何かが少しずつ蓄積されているような感覚…それが、爆発したようだった。

 「りっちゃんはゆいちゃんみたいにりょうちゃんにしつこく詰め寄ったりしないよ。陽菜ちゃんといる時の幸せそうな表情見たでしょう?自分がりょうちゃんにいつまでも未練持ってたからって一緒にしないで…あと、さっきの言い方は何?りょうちゃんはゆいちゃんのものじゃないよ…そろそろ、いい加減にしよっか……」
 「まゆ!」
 「まゆちゃん!」

 それ以上は…と、僕と春香が止めようとした頃には手遅れだった。ゆいちゃんは泣きながら部屋を飛び出して行く。

 「りょうちゃん、ゆいちゃん追いかけて。早く!」
 「う、うん。春香、まゆのこと、お願い」
 「うん。任せて」

 まゆを春香に任せて僕はゆいちゃんの後を追いかける。まゆのこともすごく心配だ。まゆの側にもいたい。でも、まゆには春香がいる。春香になら、任せられる。でも、ゆいちゃんには…僕しかいない。

 今更気づいた…この差が…4人の課題だったのだと…

 春香には、僕とまゆがいた。
 まゆには、僕と春香がいた。
 でも、ゆいちゃんには僕しかいなかった。

 4人はたしかに、仲良くやれてたよ。でも、4人全員が心の底から信頼しているわけではなかった。少し、ほんの少しの溝を、いつまでも放置していたツケが、今になってのしかかってきている。

 春香とまゆの不満と、ゆいちゃんの不安、どちらも気づいていたはずなのに…春香とまゆの優しさに甘えて、ゆいちゃんを甘やかしてばかりいたツケが回って来た。

 今更になって後悔する。もっと、早く、手を打つべきだったと…3人を幸せにすると言ったのに…春香とまゆに我慢させて、ゆいちゃんを傷つけて……情けない。

 反省は…後にしよう。今は、とにかく、ゆいちゃんを…







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