お互いに好きだけど好きと言えない幼馴染の同居生活

りゅう

それぞれの20分間





 四条大橋付近では、割と名物になっているものがある。それは、鴨川名物の等間隔に座るカップルだ。

 「僕たちはどうするのが正解なの?」

 当たり前だが、周りはみんな2人カップルだ。4人カップルの僕たちは明らかに異端だ。

 「普通に4人で座ればいいんじゃないかな」
 「うん。春香ちゃんの言う通りだと思うよ。4人で座ろう」

 そう言ってまゆは僕の腕を引っ張り、等間隔カップルの仲間入りをする。だが、やはり4人で座るのは異端(4人で座ってる人もいるにはいるけど、ダブルデートで来た男女4人という感じ。僕たちは男1人に女3人で、めちゃくちゃ目立つ。しかも、女の子3人は着物姿だし……)

 着物が汚れないようにシートを敷いてその上に4人で座り鴨川を眺める。

 「せっかくだしさ、時間決めて交代で2人きりにならない?」

 鴨川でなく、2人きりで座っているカップルを少しだけ羨ましそうに眺めていた春香を見て僕が提案すると、みんな同意してくれた。

 「じゃあ、まずは春香から、まゆとゆいちゃんは悪いけど少しだけ歩いて来てもらっていいかな?」
 「はーい。ゆいちゃん行こうか」
 「りょうくん、1人20分だからね」
 「うん。わかってるよ」

 近くのお店を覗きに行ってくる。と言うまゆとゆいちゃんを見送って春香と2人きりになる。

 「春香、手、繋いでいい?」
 「うん」

 春香と2人きりになって僕はそっと春香と手を繋いだ。手を繋ぐと春香は僕の肩にもたれかかってきてくれてすごく愛しい。

 「2人の方がよかった?」
 「………そんなことないよ。私、まゆちゃんもゆいちゃんも大好きだもん」
 「そっか…」
 「そうだよ」

 無理して言っている感じはしなかった。本心だろう。でも、あの時、2人きりで座っているカップルを羨ましそうに見つめていたのも、本心だろう。

 「こうやって春香と2人でいるのもいいね。すごく幸せ」
 「うん。私も幸せ」
 「今度からはたまに2人で出かける日とか作る?」
 「でも、まゆちゃんやゆいちゃんに悪いし…」

 4人でいたい。と言うのも2人でいたい。と言うのも本音。なのに、何故、2人でいたい。と言う感情を隠そうとするのか。きっと、4人でいられなくなるのが怖いからだろう。最近、春香は前以上に引っ込みがちだ。たぶんそれは、4人でいられなくなるのが怖くてそうならないように春香がバランスをとってくれていたからだ。結局、いつも、辛いところは春香に押しつけてしまっている。情けない…

 「まゆともゆいちゃんとも、今みたいにローテーションで2人きりでデートする。だからさ、今度2人でゆっくりどこか行こうよ。最近、春香と2人の時間あまり作れてなくて寂しいからさ。お願い」
 「………わかった。りょうちゃん、ありがとう。大好き」
 「ありがとう。はこっちのセルフだよ。春香、本当にありがとう。大好きだよ」

 そう言って春香をギュッと抱きしめてキスをした。外でこういうことをするのは恥ずかしいが、周りのカップルもこんな感じだったので、あまり気にならなかった。

 春香との20分はあっという間に終わり、春香と交代でまゆと20分を過ごす。まゆは僕の隣でずっと幸せそうな表情をしていて、いろいろと楽しくお喋りしながら鴨川の景色を眺めていたらあっという間に20分が経過する。最後に、先程、春香にしてあげたみたいにまゆをギュッと抱きしめてキスをする。それが終わった後のまゆの天使のような笑顔を僕は忘れないだろう。

 まゆとの20分が終わり最後はゆいちゃん、最初は楽しくお喋りしていたのだが、途中でゆいちゃんが突然、泣いてしまう。

 「だ、大丈夫?どうしたの?」
 「こうやってりょうくんと2人きりで話してすごく幸せだなぁ。って思ったら泣いちゃったの。ごめんね」
 「謝らないでいいよ。これからも、ずっと、幸せでいさせるから。絶対、幸せにするから」
 「幸せにする。って言いながら私のこと泣かせないでよ」

 ゆいちゃんは、先程よりも大粒の涙を流して笑った。すごく、幸せそうに。僕はゆいちゃんを抱きしめてキスをする。それが終わると、ゆいちゃんは今日1番幸せそうな表情を見せてくれる。

 「夢みたい…」
 「夢じゃないよ」
 「ありがとう」
 「こちらこそ」

 泣いてしまったゆいちゃんの頭を撫でながら短い言葉を交わした。あっという間に20分が経過して、再び4人で行動する。








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