お互いに好きだけど好きと言えない幼馴染の同居生活

りゅう

好き。大好き。






 「まゆ、送ってくれてありがとう。大好き」
 「うん。がんばってね」
 「りょうちゃん、私たちもついて行こうか?」

 まゆにゆいちゃんの下宿先のアパートの近くまで送ってもらい、車から降りると春香が心配そうな表情で言う。

 「大丈夫。1人で行くよ」
 「そっか…わかった…」

 少しだけ寂しそうな表情を春香がしたのを見るとちょっと罪悪感を感じる。きっと、春香は僕の側にいて僕を支えたかったのだろう。

 「春香、まゆ、今からゆいちゃんのところ行ってくるけどさ、結果がどうなってもゆいちゃんとの話が終わったら笑顔で出迎えて欲しいな」
 「わかった」
 「お安い御用だよ。あ、今から近くのスーパーで夜ご飯の材料買ってくるから話終わったら連絡して、迎えに行くから。今日はりょうちゃんが好きなものいっぱい作ってあげるね」

 そう言って笑顔で春香とまゆは僕を送り出してくれた。僕は春香とまゆにありがとう。とお礼をして、ゆいちゃんの部屋に向かう。



 ゆいちゃんの部屋についてインターホンを押すと、目の下が赤く腫れているゆいちゃんが扉を開けて姿を現した。

 「やっぱり泣いてるじゃん…」

 僕がそう言うとゆいちゃんは更に泣いてしまう。でも、悲しくて泣いている。と言う様子ではないような気がした。

 「大丈夫?」

 僕がそう尋ねるとゆいちゃんは泣きながら僕に抱きついてきた。受け止めていいのか悩んだ。でも、いつの間にか優しく受け止めていた。

 「大丈夫じゃないもん…」

 泣きながらゆいちゃんはそう言った。もう離さないから。とでも言うようにゆいちゃんは僕を強く抱きしめる。

 「そっか、ごめんね」

 僕はゆいちゃんの頭を撫でる。そうするとゆいちゃんは更に激しく泣いてしまった。泣き止んでほしくて頭を撫でたのになぁ…

 「なんで…来たの?放っておいてよ……もう、関わらないって決めたじゃん……」
 「わかった。じゃあ、離してくれるかな?」

 僕がゆいちゃんにそう言うとゆいちゃんは先程よりも強く僕を抱きしめた。離したくない。と態度で示してくれていた。

 「ねぇ、りょうくん…」
 「どうしたの?」
 「どうしよう。離せない…腕が動いてくれない……」
 「離さなくていいよ。ちょっとお話ししよう」
 「うん…じゃあ、中…入って……」

 ゆいちゃんに案内されてゆいちゃんの部屋に入るのだが、玄関から部屋まで、ゆいちゃんは歩きながらも僕に抱きついていて離してくれなかった。

 「ゆいちゃん、正直に言って、本当にもう、僕と関わりたくない?」
 「聞く必要…ある?」

 ソファーに座っても僕を抱きしめているゆいちゃんは涙目で僕に言う。もう、態度で示してるじゃん。と言うような表情だった。

 「直接、聞いて言質取らないと」
 「そう…だよね…嫌、だよ。耐えきれないよ…耐えきれないけど…そうするしかないんだよ。だって、今、こうされてるのだって、春香先輩とかまゆ先輩が見たら不快に思われるだけだよ。私、りょうくんに迷惑かけたくないの」

 今度は辛そうな表情で泣きながらゆいちゃんは僕に言う。

 「迷惑なんかじゃないよ。僕は、ゆいちゃんと関わらないなんてことはしたい。これからも友達でいたい」
 「嘘…こんなめんどくさいやつとなんか関わりたくないに決まってるでしょう…こんなめんどくさいやつさっさと見捨ててよ」
 「嘘なんかついてないよ。僕は本当にゆいちゃんと友達でいたい。じゃないと、大切な春香とまゆとの時間を割いてこんなめんどくさい奴のところになんか来てないよ」

 ゆいちゃんと友達でいたい。と言う言葉を嘘と言われて、結構ムキになって、つい、強く言ってしまった。ゆいちゃんを見るとキョトンとした表情をしていたが、先程よりも流れる涙の量が増えていたのは一眼でわかった。

 「ゆいちゃん…ごめん……」
 「好き…」
 「え?」
 「好き。そんなこと言わないでよ。私みたいなめんどくさい奴、さっさと見捨ててよ。そんなこと言われたら…ますます好きになっちゃうじゃん…」

 ゆいちゃんは、今日一番の勢いで涙を流して僕を強く抱きしめる。ゆいちゃんの涙を見て、しばらく話すのは無理そうかな。と思い、僕は僕を抱きしめるゆいちゃんの背中を片手で優しく撫でて、もう片手でゆいちゃんの頭を撫でる。

 「好き…大好き…めっちゃ好き…世界で一番、りょうくんのことが好き…ずっと、これからも、いつまでも、私は…りょうくんと一緒にいたい」

 涙声でゆいちゃんは僕に言う。僕を抱きしめて、熱があると思ってしまうくらい、身体を熱くさせて、ゆいちゃんは僕に言う。その、ゆいちゃんの言葉に…想いに僕はどう応えればいいのか、わからなかった。





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