お互いに好きだけど好きと言えない幼馴染の同居生活

りゅう

どっちもどっち






 「あれ、春香ちゃんにまゆちゃんにりょうちゃんにゆいちゃんにさきちゃんじゃん。よかったら一緒に食べない?」

 店に入ると奥の座敷席に座るりっちゃんさんに声をかけられる。今日はバイトではなく、陽菜と夜ご飯を食べに来ていたみたいだ。せっかくなので一緒に食べることになり、6人用の座敷席にちょっと窮屈だけど7人で座る。りっちゃんさんたちも今来たみたいで、まだ注文をしていなかったので7人でまとめて注文した。りっちゃんさんがいるとりっちゃんさんがセルフで注文を取り始めるから面白い。

 「りょうちゃん、陽菜ちゃんにはりっちゃんから相談されてたこと内緒だからね!」

 小声で春香に言われたので僕は軽く頷いた。あと数秒遅かったら陽菜に大丈夫?と聞いていたので割と危なかった。まあ、でも、りっちゃんさんにひっついていちゃいちゃしている陽菜は元気そうで安心した。

 「あれ、そう言えばさきちゃんいるのにこう君いないんだね」

 りっちゃんさんがそう言うと一瞬でさきちゃんの表情が変わってしまいゆいちゃんは慌ててさきちゃんの方を向いた。

 「りっちゃんさんがさきちゃん泣かせた〜」
 「陽菜、たぶん、今、そう言う冗談すら言っちゃダメな流れだよ…」

 さきちゃんが泣いてしまったのを見て陽菜が冗談っぽく言うが時すでに遅しだった。

 「えっと、さきちゃん、何かあったの?話くらいなら聞くよ」

 泣き続けるさきちゃんにりっちゃんさんが言うとさきちゃんは首を横に振る。大丈夫です。と言うつもりなのだろうが、放っておいて大丈夫なのかな…とゆいちゃん以外全員がそう思った。

 「りょうちゃん、ちょっとこう君に連絡してあげて…さきちゃんがこの様子だとこう君も心配だからさ…さきちゃんにはゆいちゃんがいるけど、こう君大人しいから一人で悩んでないか心配だからさ…」

 小声でまゆにそう言われて僕はこう君に連絡をしてみる。「今、みんなでご飯食べててこう君の名前出たらさきちゃんが泣いちゃったんだけど、何かあった?大丈夫?」と連絡をするとすぐにこう君から既読が付いた。

 「昨日、さきにフラれた…」

 こう君から来た返事を見て僕はえ?と声を出してしまったが、慌てて口を塞いだ。

 「この前、友達の家でタコパして、女の子の家だったんだけど、他に男の友達もいたり、割と大人数だったからさきに許可もらって行ったんだけど…途中で体調悪くなって、結局女の子の家で一晩2人になって…やましいことは何もなかったんだけど、さきに余計な心配させたくなかったから黙ってたら別の友達からさきに伝わって、体調悪くなって帰れなかったのは仕方ないけど、後からでもいいから教えて欲しかったな。って昨日デートの時に言われて…そのままデートお開きになってそれ以降連絡くれないんだ……」

 これ、こう君も精神的にやばそうだなぁ…うーん。さきちゃんに余計な心配させたくないこう君の気持ちもわかるし、彼氏に大事なことで隠し事されたくないさきちゃんの気持ちもわかる。

 「さきの様子はどう?」
 「こう君は一緒じゃないんだね。って言われたら泣いちゃってる…」
 「さきを泣かせないでよ」
 「ごめんなさい」

 なんで僕が怒られて僕が謝っているのだろう。割と理不尽…泣かせたの僕じゃないのに……

 とりあえず、さきちゃんもこう君も別れたい。と思っているわけではない気がする。いや、どうだろう。さきちゃんの涙が、こう君のことが忘れられなくて辛くて泣いているのか、こう君に隠し事をされたことが許せなくてないているのかにもよって話が変わる気がする。さきちゃんの様子からして前者だと思うけど…もし、お互いにまだ未練があるならこのまま別れてしまうのは悲しい気がする。

 「ゆいちゃん、ちょっといい?」
 「え、あ、うん」

 さきちゃんが泣き止んだ後に、ゆいちゃんを連れて一度お店を出る。

 「事情はさっきこう君から聞いたんだけど、ゆいちゃんは知ってる?」
 「詳しくは知らない。昨日、夜中にいきなりさきから電話かかって来て出たらめちゃくちゃ泣いてこう君と別れるかも。ってずっと言い続けて話にならなかったから、今日、夜ご飯食べながら話聞くつもりだったの…」
 「そっか…ちょっと待ってて…」

 こう君に連絡してゆいちゃんに話していいか尋ねると許可が取れたのでゆいちゃんに僕とこう君のやり取りを見せる。

 「うーん。こう君が悪い気もするしさきもなんていうか細かすぎる気もする…どっちもどっち?とりあえず、さきがこう君に捨てられたわけじゃなくて安心した…」
 「さきちゃん、まだこう君のこと好きだよね?」
 「そうじゃなきゃあんなに泣かないでしょ…」

 ゆいちゃんは迷わず即答する。昨日、さきちゃんが泣きながらゆいちゃんに電話したこととかも考えると、やっぱり勢いでこうなっちゃったのかな…と思う。

 「しょうがない。バカな親友を助けてあげますか…」

 いつしか、さきちゃんがゆいちゃんに言ったようなことをゆいちゃんが呟いて僕とゆいちゃんはお店に戻る。







コメント

コメントを書く

「恋愛」の人気作品

書籍化作品