お互いに好きだけど好きと言えない幼馴染の同居生活

りゅう

素直になって




 「春香ちゃん、ちょっと来て!」

 まゆはできるだけ笑顔でりょうちゃんの部屋で待っていた春香ちゃんに声をかける。正直言って、みのりさんは苦手だ。だけど、春香ちゃんにとって、みのりさんはきっと大切な友達だろう。このまま、春香ちゃんとみのりさんが疎遠になってしまうのはまゆが嫌だった。

 「どこに?」
 「お庭!りょうちゃんが待ってるからさ」
 「りょうちゃんだけ?」

 まゆが春香ちゃんの手を掴むと、春香ちゃんは冷たい感じの声でまゆに尋ねる。ここで嘘をついてもどうしようもない。とまゆは思ってまゆは春香ちゃんにみのりさんもいることを伝えると春香ちゃんはいかない。と宣言してりょうちゃんのベッドから動いてくれない。

 「春香ちゃん、本当にこのままでいいの?」

 動こうとしない春香ちゃんの横に座ってまゆは春香ちゃんに尋ねる。春香ちゃんは黙り込んで布団をかぶってしまった。

 「春香ちゃん!」
 「いい。このままでいい。私の大切なまゆちゃんにあんな酷いこと言って私の幸せを壊そうとするみのちゃんなんか友達じゃないもん」
 「春香ちゃん、まゆのために怒ってくれてるの?」
 「当たり前じゃない…まゆちゃんは、私とりょうちゃんの大切な人なんだから……」

 春香ちゃんにそう言われてまゆは嬉しい。だけど、まゆは春香ちゃんにはみのりさんと仲良しでいて欲しい。って思う。

 「春香ちゃん、まゆのために怒ってくれてありがとう。嬉しいよ。でも、春香ちゃん、意固地になって後悔するのはなしだよ。後悔した時にまゆを言い訳の理由にしたら、まゆ、本気で怒るからね」

 まゆは春香ちゃんがかぶっていた布団を強引に取り上げて春香ちゃんの顔を見て言う。

 「春香ちゃん、自分の感情に素直になろうよ。ほら、まゆと一緒に行こう」

 まゆは春香ちゃんに手を伸ばす。春香ちゃんは一瞬、まゆの手に手を伸ばそうとしてくれたがすぐにまゆに背を向ける。

 「春香ちゃん、素直にならないとりょうちゃんに呆れられちゃうよ〜」

 まゆは春香ちゃんを背中から抱きしめて春香ちゃんの耳元で囁く。まゆの言葉を聞いた春香ちゃんは「それは嫌!」と言ってまゆの顔を見る。

 「嫌でしょう?ほら、じゃあ、素直になろう。春香ちゃんはどうしたいの?本当のことを言ってみて。まゆもりょうちゃんも協力するよ。あと、まゆもりょうちゃんも怒ってないからね。安心して…」
 「まゆちゃん、ありがとう。私、本当に怒ると素直になれなくてごめんなさい。私、みのちゃんと仲直りしたい。みのちゃんとは友達でいたい。これからもずっと、今までみたいに仲良くしていたい」
 「そうそう。そうやって最初から素直に言ってくれれば、まゆとりょうちゃんが苦労しなくて済むのに〜」
 「ごめんなさい…」

 まゆが冗談で言うと春香ちゃんは間に受けてしまい、落ち込んだ様子を見せる。冗談言いすぎたかな…春香ちゃん、ごめん。

 「春香ちゃん、気にしなくていいからね。冗談言ってごめん。いつもはさ、まゆがバカだから春香ちゃんにいっぱい迷惑かけちゃってるからたまには春香ちゃんがまゆを頼ってくれていいんだよ。頼りないかもしれないけどさ、まゆ、春香ちゃんのためならなんだってするから」
 「まゆちゃん…ありがとう。大好き」
 「まゆも春香ちゃんのこと大好きだよ」

 まゆは大好きと言いながらまゆに抱きついてきた春香ちゃんを受け止める。めちゃくちゃかわいいなぁ。

 「じゃあ、いつまでもりょうちゃんとみのりさんを待たせてたら申し訳ないし、そろそろ行こうか」

 まゆはそう言って春香ちゃんに手を伸ばすと、春香ちゃんはまゆと手を繋いでくれた。そしてそのまま手を繋いでまゆと春香ちゃんはりょうちゃんとみのりさんの元に向かう。






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